【発達障害の治療と薬】実際に服薬してみてどうだった?

「発達障害の特性を治療でどうにかしたい」

「服薬をすることでもっとスムーズに毎日を送りたい」

発達障害と診断を受けた場合、服薬や心理療法を勧められることがあると思います。そこで、発達障害の治療法にはどんなものがあるのか、そして治療薬はどのようなものがあり、どんな効果があるのかをお伝えします。特に治療薬については、体験談を織り交ぜながらご説明していきたいと思います。

皆さんが少しでも過ごしやすい社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。

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執筆者紹介

小鳥遊(たかなし)さん

発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。

発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。

また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。

発達障害とは

まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。

「先天的」なもの

発達障害は、先天的な脳機能の障害です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。

大きく分けて3つの要素がある

発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害

注意欠如・多動性障害(ADHD)

不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害

限局性学習障害(SLD)

全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態

発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。

発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。

発達障害の治療について

一般に、医師から病気であると診断された場合、治療を受けたり薬を処方されたりします。発達障害も同じです。成育歴や日々の行動の聞き取りや、考え方や知能等の心理検査の結果をもとに診断され、治療を受けます。発達障害の治療には、大きく分けて「心理社会的治療」と「薬物療法」の2つがあります。

心理社会的治療

心理社会的治療は、「発達障害は先天的なものであり、障害そのものを『治癒』することは困難である」という見地に立ちます。そのため、本人が自らの特性と向き合い、社会に適応していくためのスキルを身に付けることが目的となります。

心理社会的治療の代表格といえば「認知行動療法」です。自身の「認知(ものごとのとらえ方)」を観察することで、そこから生まれる「感情」「行動」を変化させて生きづらさやストレスを軽くしていく治療法です。

認知行動療法については、下記記事を合わせてお読みください。

その他にも報告・連絡・相談のロールプレイなどをする「ソーシャルスキルトレーニング」、特性による困りごとが発生している状況において、そもそも本人の周囲を調整して困りごとが発生しないようにする「環境調整」というものが挙げられます。

薬物療法

心理社会的治療に対して、直接身体に作用する薬物を用いて困りごとに対処していくのが「薬物療法」です。ただし、現在はADHDの治療薬はあるものの、ASDやSLDへの治療薬はありません。また、症状を根治するものではなく、一時的に症状を抑えるものとなります。

とはいえ、服用した経験のある人からは、「頭の中がスッキリ静まり返ってびっくりした」「集中力が劇的に上がった」といった感想があがることがあり、一定の効果が得られるところは見逃せません。ADHDの治療薬として承認を受けている薬は以下の4つです。

名称内容
コンサータ
(メチルフェニデート塩酸塩徐放錠)
・即効性あり
・約12時間程度で効果が消失
・ADHDの子どもの7割に効果
・2013年に18歳以上の成人投与承認
ストラテラ
(アトモキセチン塩酸塩)
・効果が現れるまで約8週間ほど
・1日2回服用で24時間効果が継続
・2012年に18歳以上の成人投与承認
インチュニブ
(グアンファシン塩酸塩徐放性製剤)
・2017年3月に承認
・特に多動性・衝動性について新たな治療の選択肢となることが期待される
ビバンセ
(リスデキサンフェタミンメシル塩酸)
・2019年3月に「小児期におけるADHD」の適応において承認
・ADHDの診断治療に精通した医師に限り、薬物依存にも対応できる医療機関薬局においてのみ取り扱い可
・他のADHD治療薬が効果不十分のときのみに使用

なお、ASDやSLDの特性を持つ人に対しては何も薬物療法をおこなわないかというとそうではありません。例えば二次障害として不安や不眠などの症状が出ている場合には精神安定剤などの治療薬を用いたりしています。

二次障害については、下記記事を合わせてお読みください。

薬物療法の事例

ここでは、実際にお二人の方の薬物療法の経験談をご紹介します。

ストラテラを服用しているAさん

●診断名:ADHD

①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。

メリットは「衝動性が抑えられること」です。服薬前は「これをやりたい」「これを言いたい」「これを食べたい」という思いつきを即行動に移してしまっていました。特に過食に関しては深刻で、成人してから食欲が抑えられず、食費と体重が上がり続け、自己効力感を著しく下げてしまっていました。

しかし、服薬をしたところ、食欲を感じても、実際に食べ物を購入して口に入れるかどうかをいったん待って考えられるようになりました。すると、食費も下がり適正体重をキープすることもでき、自己効力感も上がりました。そんな自分を好きになることができました。

デメリットは、「自分の持つ特性を『障害』と深刻に捉えてしまうこと」です。服薬をしているということは、「服薬をして抑えなければいけない障害がある」ということだと考えるようになりました。

②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。

服薬し始めた当時は「これで忘れ物もミスも全部なくなるかもしれない」と期待しましたが、なくなりませんでした。服薬は「忘れ物やミスの軽減」をもたらすものではなく、忘れ物やミスをしたときでも落ち着いて「次はこうしたらいいかもしれない」と考えられるきっかけに過ぎませんでした。

ただ、そのきっかけをもとに、対策を考えたりこれからの働き方や生き方を考えたりすることができるようになりました。最初は落ち込んだこともありましたが、結果的に医師に診断書を書いてもらって支援機関に頼ることもでき、そうして成し遂げてきた自分の足跡を振り返ると、前向きに考えるきっかけになったことは大事だったような気がします。

③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。

ストラテラは服薬をしていないとき、私は「服薬していない」という感じがあり、自宅での飲み忘れに対しては気付いて服薬することができていました。しかし、外出先で飲み忘れに気付いたときは、手元に薬がないため困ることがありました。

対策としては、絶対にカバンに入れるポーチに1回分のストラテラを入れておいて、外出先でも服薬できるようにしています。ポーチは目立つように金色のものを使用しています。

過去にストラテラ、現在はコンサータを服用しているBさん

●診断名:ADHD、ASD

①ご自身が感じる服薬のメリットデメリットについて教えてください。

個人的には、服薬の効果があまり感じられていません。飲み忘れたとしてもほとんど何も変わらない、というのが正直な感想です。強いてメリットを言えば「お守り的に気休めになる」という程度です。ただ、飲み忘れたことで「薬を飲んでいないから、なんとなくいつもより仕事がはかどらないかもしれない…」と不安になることはあります。

デメリットとしては、「自分に合う薬を見つけるのに時間がかかる」ということです。ストラテラは低用量と高用量の2つを試したのですが、低用量の時は効果が感じられず、逆に高用量になってからは「眠気」「だるさ」という副作用がひどく、仕事に支障が出てしまいました。このことがはっきり分かってコンサータに切り替えるまで1年ほどかかってしまいました。

また、転院したいと思った際に障害になるかもしれない点もデメリットだと感じました。コンサータは登録を受けた患者が、登録を受けた医師や薬剤師から処方してもらわなければいけません。そのため、転院したいと思っても、その手続きが煩雑になるのではないかと思い、転院の足かせになるように思います。

②服薬だけでは特性対策は難しいと感じたことはありますか。

①で挙げたとおり、私にはほとんど効果が感じられないので「大いにYES」です。自立支援医療費制度のおかげで金銭的負担を抑えられるため、お守りとして飲み続けていますが、薬以外でなんとか対処するしかないと感じています。

対処法としては、以下2点を実行しています。

自分の特性を理解する

インターネットや発達障害関連の書籍、それと私がアルバイトさせてもらっていた就労移行支援事業所で自分の特性への理解を深めることができました。インターネットは玉石混交なので注意が必要ですが、およそ公的機関や大手就労移行支援事業所の発信する情報であれば信頼できると考えています。個人的には、就労移行支援事業所でのアルバイトがとても学びが大きかったです。

自分に合った自己対処を見つける

仕事の抜け漏れ防止のためのタスク管理/メモアプリや、スケジュール管理ができるリマインダー/カレンダーアプリなどを使ってきました。ただし、管理の時間がうまくとれず、忙しくなると面倒になって崩壊してしまいがちでした。でも、管理しなければ確実に崩壊してしまうのです。「どちらにせよ崩壊するなら、管理の時間を捻出する方向で頑張ろう」と考えると、ちょっと気持ちが楽になります。

また、自分で管理をしていくのと同時に、環境を調整することも大事だと考えています。ただ、これは本当に難しくて、「もっと努力すればできるのではないか」「対処法を駆使すればできるようになるのではないか」「今の業務に慣れたら、より上位の業務や役割に挑戦すべきではないか」など、ともすれば「自分を変える」方向にいきがちになってしまいます。挑戦と失敗を繰り返しながら少しずつ調整をしていくようなイメージが自分には合っているかなと思います。

また、眠気や集中力低下の予防としてカフェインサプリ「カフェロップ」をたまに飲んでいます。

③「服薬し忘れ」や「飲み忘れ対策」のエピソードがあれば教えてください。

スマホのリマインダーアプリを使って飲み忘れ防止アラートを鳴らすようにしています。ただ、アラートが鳴っても「どうせ飲んでも変わらないしな…」と思ってスルーしてしまうことも多いです。

薬物療法と心理社会的治療の両軸が鍵!

このように、薬物療法による効果には個人差があります。ただし、服薬によって状態が少しでも改善できるのであれば、やらない手はありません。医師の処方にしたがって服薬し、さらに心理社会的治療もやってみるというのがベストなのではないでしょうか。

特に、心理社会的治療の代表格である「認知行動療法」は、自己理解のための王道であると言っても過言ではありません。薬物療法とあわせてやってみることを推奨します。就労移行支援事業所ディーキャリアは、この「認知行動療法」に基づいたプログラムを提供しています。自分一人でやろうとしたり、余計に手間をかけてしまうよりも、専門家の手を借りることも検討してみましょう。

就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。

就労移行支援事業所とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚生労働省の許認可事業)

就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。

「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。

もちろん、今の時点でサービスを利用する目的を決めていなくても大丈夫です。

「まだやりたいことが決まっていない、将来のビジョンが見えていない」
「何を目的にサービス利用をすべきかイメージが湧かない」
「自分に合っているか分からない」

…と悩んでいる方も安心してお問い合わせください。一人ひとりのご状況や困りごとをヒアリングしながら、ご提案をさせていてだきます。

ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。

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また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。

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記事監修北川 庄治(デコボコベース株式会社 最高品質責任者)
  • 一般社団法人ファボラボ 代表理事
  • 特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会 評議員
  • 公認心理師
  • NESTA認定キッズコーディネーショントレーナー
  • 発達障害ラーニングサポーター エキスパート
  • 中学校教諭 専修免許状(社会科)
  • 高等学校教諭 専修免許状(地理歴史科)
東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。

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