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発達障害や鬱で「就活がうまくいかない」苦手感の克服方法

就活がうまくいかず250社落ちた経験のあるADHD当事者が、失敗から学んだ対策法について紹介します。特性理解がポイントです!

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「就職活動、お見送りの連絡ばかりでちっとも内定がもらえない」 「そもそも、選考に通る履歴書や職務経歴書の書き方のコツが分からない」 ADHDの診断を受けた筆者は、上記のような悩みを抱えて就職活動(就活)をおこない、250社落ちました。その経験から、どんな特性がありどんな困りごとがあったのか、その対策を講じるにはどうしたらいいかをお伝えします。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 特性による就活困りごとエピソード ここでは、筆者にある特性や発達障害の特性がある人ならではの就活における困りごとエピソードをお伝えします。 衝動性 ADHDには衝動性という特性があります。筆者においては、「考えたことを口に出さないと気が済まない、思考がつい口をついて出てしまう」という形で表れました。その特性に関連した就活失敗事例をお伝えします。 ①話しすぎ シンプルに面接で話しすぎていました。筆者は1社目を退職した後、半年ほど就活をしました。その半年間に(障害者雇用と一般雇用の求人合わせて)250社近くお見送りをされ、3社から内定をもらいました。その3社の内定は、「あること」に気をつけた途端に連続して獲得することができました。 その「あること」とは、話しすぎないということです。具体的には、「いったん言い終わったら、『これも言った方がいいかも』という内容を付け足さず、ぐっとこらえて相手の反応を見る」というものです。おそらく、付け足しの言葉はかなりの確率で相手にとって無駄なことだったのでしょう。無駄が削ぎ落され、分かりやすく話せるという好印象を面接官に与えた結果、内定につながったのではないかと考えています。 ②思考がそのまま口に出てしまう 大学生のときの話です。ある金融機関に応募したところ、面接前日に面接官を名乗る人から携帯電話あてに着信がありました。出てみると、翌日の面接に成績証明書を持参して欲しいとのこと。前日にいきなりそんな指示をされて少々面食らった私は、「え!?今日の明日ですか!?いきなり言われても用意できないかもしれませんが、とりあえず頑張ってみます」と答えました。 翌日、成績証明書が手に入り「これでどうだ」とばかり面接に臨みました。すると、面接官の態度がとてもそっけなかったのです。結果はお見送りでした。結果の連絡があってから、「あのとき『はい!明日大学で取ってまいります!」と元気よく返事をしていたら、もしかしたらそっけない態度もされず、選考も先に進めたのではないかと思いました。 意に沿わないことを言われても、笑顔で対応することが求められていたのかもしれません。思考をそのまま口にしてしまう傾向がストレートに出てしまったことで、お見送りという結果につながったのではないかと考えています。 知識の偏り 筆者がADHDの診断を受けたとき、臨床心理士から心理検査の結果に関して「知識の偏りがある」と言われました。知識に偏りがあるということは、興味があることについては積極的に行動し知識と経験を蓄積していくのに対して、興味がないことに関しては行動も消極的になり、経験も積めず知識も蓄えられないということです。 大学生のときの話です。同級生は就活をしてある程度経つと何らかの企業から内定をもらうようになりました。一方、筆者は内定が出ずじまいでした。その違いとして筆者が感じたのは、「説得力のある志望動機が言えるかどうか」でした。 同級生は、仮にA社の事業内容について少ししか興味がないにもかかわらず、その自分の興味とA社の事業内容の重なる部分をクローズアップして、「ということで御社に興味を持ちまして......」と言えていたのです。対して筆者は、自己分析や業界研究をあまり深めていなかったこともあり、基本的に一般企業の事業内容に共感もできず興味も持てず、志望動機が言えなかったのです。 それでも無理矢理ひねり出したのですが、社会の荒波に揉まれ人生経験を積んだ面接官が「これは本気で思っていないな」と見抜くのはたやすかったことでしょう。 能力の凹凸の落差 これは厳密に言うと「発達障害の特性」とは違いますが、ある能力は秀でているのに、別のことについてはびっくりするぐらいできないのは、発達障害のある人によくあることです。 とある有名企業の特例子会社の最終面接で、会社の役員の人たちが数人並んでいる中、そのうちの一人から「君はここにくるべき人ではない」と言われてしまいました。筆者は、「物忘れ」「先送り」「自責傾向」「段取り下手」という、どちらかと言うと事務処理に関する能力に自信がなく、逆に人前で話すようなことは大の得意でした。面接ではその筆者の得意がいかんなく発揮されたのです。 普通の面接であれば、好印象を与えて「では合格!」という方向にいきそうなものです。しかし、おそらく逆に「こんなにちゃんとしているのに、なぜ特例子会社で障害者雇用に応募してくるのだろうか」と面接官の人たちは思ったのでしょう。そして出てきたのが、「君はここにくるべき人ではない」という、やんわりとしたお断りの言葉だったのではないかと筆者は思っています。 特性があることによる自信のなさ これも特性自体の話ではありませんが、仕事に支障が出るような特性があるという後ろめたさ・自信のなさを埋め合わせるように譲歩をしてしまっていました。 ①「合理的配慮いりません」 初めて会社というものに入社して(障害者雇用で)働き始めたときの話です。配慮事項を聞かれたとき、「こんな自分を採用してくれたんだから、余計な迷惑を会社にかけていられない」という気持ちから、「合理的配慮をしていただく必要はありません!足りないところがあれば、自分で頑張ってどうにかします!」といった返答をしてしまいました。 ②休みが求人票と違っても受け入れる 上記とは別の会社で、一般雇用で入社したときの話です。求人票では「土日祝日お休み」と書いてあったのですが、内定をもらってから説明を受けたときには、「休みは月9日のシフト休日」と言われたのです。筆者は休日は就職にあたって重要な事項と考えていたため、とても迷いました。しかし、一般雇用で役職つきであり比較的高めの給与であったこと、何より「これを逃したら、これ以上の条件で就職できないのではないか」という自信のなさから、その条件を受け入れてしまいました。 こういった特性をあらかじめ知った上で就活をしていれば、250社も落ちなかったんじゃないかと筆者は今になって思います。 特性を知る方法 ここでは、特性を知る方法について、筆者の経験談も交えてお伝えします。 就活サポートの事例から 就労移行支援事業所ディーキャリアの就職サポートの事例で、卒業生の方がこのように振り返っています。 発達障害のある方が長く働くためには、自分の特性について知ることがとても大切だと考えています。自分にどのような特性があるかを知って、どのように具体的に対策をすればよいかを知ることで、働きやすくなると思います。面接のときにも、自分の障害のこと・特性への自己対処法・企業に求める合理的配慮を自分で説明する必要があり、自己理解の度合いが採用の合否にも影響することもあるそうです。事業所によって支援実績のある障害種別が違うので、自分の障害にあった事業所で、自己理解とセルフケアを学ぶのがおすすめです。 筆者が特性を知った経緯 筆者が初めて就活をしたのは、今から10数年前、2007年のことです。その頃は就労移行支援というものを筆者は知らず、ひとりで就職活動をしていました。そもそも、障害者の就労を支援するいわゆる就労移行支援という制度は2006年に施行された「障害者自立支援法」に基づいたものなので、知らなくても無理はありません。 ひとりで障害者雇用の求人票を見てはハローワーク経由で連絡し、ひとりで履歴書などの書類を作って提出し、面接を受けるという流れを半年程繰り返して1社目で働き始めます。そのプロセスには、自分の特性を知る機会はほぼありませんでした。 それからどのようにして特性を知ったのかというと、「ただひたすら失敗やしくじりを繰り返して経験し、自分の特性や弱みを身をもって思い知った」というのが筆者が一番しっくりくる言い方です。 この「特性の知り方」は確実です。間違いなく、自分の特性を知ることができます。しかし、時間がかかります。筆者は、2007年に会社での勤務を開始してから、明らかに自分の特性を把握しているなと実感できるようになるまで7年かかりました。また、業務での失敗やそれが重なっての休職や退職という精神的にダメージを受けることを何度も繰り返すことになるので、リスキーでもあります。 早く安全に特性を知る方法 筆者の例よりも早く安全に特性を知る方法があります。それは、第三者からの意見に耳を傾けることです。自分の特性を知ることは、多くの場合自分の弱点や苦手なことを洗い出すことになります。そういった作業は、自分ひとりではなかなかできません。家族や友人など親しい人から聞きだすのもありかもしれません。 もちろん、特性を知る手がかりとして自己分析をおこなうのも大いにありえます。自己分析の方法は、こちらにくわしく説明してありますので、ご参照ください。 ただ、「①特性を知る」ことができたとしても、そのための「②自己対処法の習得や企業に求める合理的配慮などの洗い出し」をして、その上で「③応募書類の作成や面接対策」をすることが必要になってきます。 筆者は、上記で挙げた就活では、①と②はほぼできておらず、③を自治体などが提供する就労サービスを利用しておこなったのみでした。その結果が250社のお見送りだったり、せっかく就職しても辞めることになったりということになりました。もし①から③をワンストップでサポートを受けることができたら......と思わずにはいられません。 「自己対処法や合理的配慮の洗い出し」、それと「就活」について 以上のように、障害当事者として就職するには、「特性を知る」に加えて、「自己対処法や合理的配慮の洗い出し」「就活(応募書類の作成や面接練習など)」という2点も重要だと筆者は考えています。 自己対処法や合理的配慮の洗い出しについて ①自己対処法の洗い出し 仕事をする上で起こる困りごとに対して、自分ができることを考えて洗い出しをおこないます。その多くは、「忘れないように書きとめるメモ帳を常に持っておく」「仕事上の書類が行方不明になったり紛失しないように、スキャンしてデータ保存する」といった小さな工夫であることが多いです。 「なんだ、そんな些細なことか」と思うかもしれません。しかし、筆者の経験上、「そんな些細なこと」だから、習慣化するのが難しく、自己対処のハードルを上げてしまうのです。1つ1つ確実に実行していって、自分なりの対処法を身に付けていく姿勢が大事です。具体的にどのような自己対処法があるかについて、以下の記事も参考にしてください。 筆者のおこなった自己対処法については、以下の記事に詳しく書いてあるので、よろしければご覧ください。 ②合理的配慮の洗い出し 自己対処をするにも限界があります。それでも対処できないのであれば、企業側に配慮してもらうよう理解を求めることになります。それが「合理的配慮」です。合理的配慮の基礎知識は以下の記事にまとめられているのでご紹介します。 また、特性を知るところから、自己対処法の洗い出しを経て、企業へ求める合理的配慮を決めるところまでを分かりやすくまとめた記事もあります。こちらをお読みください。 筆者は、これまでに3社の就労経験があります。1社目と3社目が障害者雇用で、合理的配慮を申請しました。1社目は前述の通り「合理的配慮無しで良いです!」と伝えました。3社目については、特性も理解し、自己対処法も確立していたこともあり、1つに絞ってシンプルに伝えることができました。それは「怒らないでください」というものです。 自責傾向が強く、また度重なる失敗やミスにより自己肯定感が低くなっていた筆者は、とにかく叱責を受けることが何より精神的ダメージを受けるものでした。怒られ終わった後も、自分による自分へのダメ出しが続き、心理的に勝手に自分を追い込んでしまうのです。その結果、仕事が手につかず、また新たなミスを誘発してしまうことも多々ありました。 そういったことにならないよう、「一点だけお願いします。怒らないでください。改善すべき点があれば、冷静に指摘するという形にして欲しいです」と、社長面接で合理的配慮を聞かれた筆者は伝えました。 ただ、「怒らないで欲しい」とは、人によっては受け入れがたい話かもしれません。そこで筆者は、仕事の進め方(タスク管理)を活用して仕事についてはしっかり責任を持ってやるという自己対処法もセットで伝え、「自分でできる限りのことはやります。それでも対処が難しいところだけはお願いします」と伝えるようにしました。 「就活」について 志望企業を選んだり、面接対策や応募書類添削などをおこなう、いわゆる「就活」については、先にご紹介した就労移行支援事業所ディーキャリアの卒業生がこのように振り返っています。 自分の経歴は変えられない中で、どう書類でまとめればよいか・離職期間や転職の回数についてどう説明すればよいかをアドバイスしてもらえたことがよかったです。離職期間が長かったり、転職回数が多い方には、就労移行支援のフォローをもらうことがおすすめです。障害者雇用枠での就職活動は、自分の障害のことや必要な配慮事項を伝えなければなりません。自分の言葉で説明するのが難しかったので、応募書類の作成や面接練習などのサポートはありがたかったです。自分に合う求人を一緒に探してくれたり、面接に同席をしてくれたりしたことも心強かったです。 「就活」については、以下のページをお読みいただくと、より具体的にご理解いただけます。 必須とも言える第三者によるサポート 特性を知ることも、自己対処法や合理的配慮の洗い出しも、そして具体的に就活をおこなう際にも、いずれも第三者のサポートは必須ではないかと筆者は考えています。筆者はすべてをほぼ自分のみでやりましたが、せっかく就職してもうまくいかなかったり、そもそも特性の理解ができていなかったり、自己対処法や合理的配慮の洗い出しをするということすら考えが至りませんでした。 さらに、これら3点がすべて揃って就職までこぎつけるのに、数年の時間がかかりました。逆にサポートがあれば、そんなにかからなかっただろうと筆者は考えています。3点をまとめてサポートしてくれる上に、志望する企業へ就職するために必要なスキル習得の訓練もできるのが、就労移行支援事業所です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ディーキャリアは、就労へ向けて以下4点においてサービスを提供しています。 「就労準備性」の向上就労するうえで必要な心身の健康管理(生活リズムの安定、通院・服薬等)、ビジネスマナーの習得、コミュニケーションスキル・実務スキルの習得等をおこないます。自分の障害特性への対処法の習得障害理解を深め、自己対処法の習得、必要な合理的配慮の洗い出しをおこないます。「自分らしい"働き方"」の探求業界職種はもちろん、一人ひとりに合った「働き方(障害者雇用or一般雇用、給与、職場環境、勤務時間等)」をスタッフに相談しながら決めることができます。就職サポート応募書類の添削や、面接練習、キャリア相談などを通して、就職に至るまでの「就活」をサポートします。具体的には以下をご参照ください。 具体的には以下をご参照ください。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 記事監修:北川 庄治(デコボコベース株式会社 プログラム開発責任者) 東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。
【発達障害当事者が解説】職場に発達障害を隠すとどうなる?

障害者雇用と一般雇用の両方で就労経験がある筆者が、自身の体験談を交えながら、障害開示をするメリットとデメリットをお伝えします。

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「発達障害を隠して働いているが、問題ないのか」「診断がある場合は、障害者雇用枠で働かないといけないのか」「発達障害があることが、会社にバレてしまうことはあるのか」 発達障害があることを職場に言わずに働いている(以下表②)場合、「自分の障害のことが知られてしまうのではないか」「知られたら辞めさせられるのではないか」という不安がつきまとうのではないでしょうか。 <発達障害のある人の働き方> No雇用枠障害のオープン/クローズ①障害者雇用枠オープン(障害を開示)②一般雇用枠クローズ(障害を非開示)③一般雇用枠オープン(障害を開示) 発達障害のある人の働き方に関する基礎情報と体験談は以下のコラムでもお伝えしています。あわせてお読みください。 発達障害の1つであるADHDの特性のある筆者は、上記①②③いずれも経験があり、一般雇用枠でのクローズ就労のときは、自分の障害がバレてしまうのではないかと考えてヒヤッとしたことがあります。そんな経験談も交えながら、「発達障害の診断が出ているが、会社に言わないとどうなる?」と気になっている方々へ、一般雇用枠でのクローズ就労のメリットとデメリット・発達障害当事者としての働き方についての考えをお伝えします。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 障害を伝えずに働くことは可能です! まず第一にお伝えしたいのは、「障害を伝えずに働くことは可能」だということです。障害があったら、それを必ず伝えなければいけないと考える必要はありません。また、こちらから言わなければ、原則的に会社は知ることはありません。 また、仮に自分の障害が会社に知られたとしても、「障害がある」という理由だけで解雇する権利は会社にはありません。障害者雇用促進法第35条では、障害者であることを理由に不当な差別的取り扱いをしてはならないと定められています。 障害者雇用促進法 第35条事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。 したがって、まずは「障害が知られても不当な扱いは受けないと制度的に保障されている」と安心していただければと思います。 障害を開示せず一般雇用枠で働くメリット そもそも、なぜ「一般雇用枠で」「障害を開示しない」クローズ就労で働くという選択肢があるのか考えてみたいと思います。 なお、冒頭でご案内したとおり、一般雇用枠でオープン就労をするという選択肢もあります。ただし、多くの場合は「一般雇用枠でクローズ就労」か「障害者雇用枠でオープン就労」のどちらかを選ぶことになるため、今回はこの2つを対比させながら考えていきたいと思います。 給料が高い 障害者雇用枠で障害を開示して働くオープン就労に比べて、一般雇用枠で障害を開示せず働くクローズ就労の方が、給料が高い傾向があります。 オープン/クローズの就労タイプ別に特徴などを図にまとめてみました。会社によって雇用条件や業務内容はさまざまですが、一般的にこのような傾向があると理解して良いと思います。 就労タイプ特徴筆者の経験事例給料障害者雇用枠オープン就労障害特性への配慮の面から、比較的負荷の低い業務が中心書類のPDF化郵便物の集配など低め一般雇用枠クローズ就労負荷が高く責任が重い業務も担う全国の社用車の配置案株主総会準備など高め キャリアパスが豊富 また、一般雇用枠のクローズ就労は、負荷の低い業務から負荷の高い業務まで幅広くこなすのが想定されるため、「将来どんな仕事をしたいか」について、より多くの選択肢があることが多いです。 それに対して、負荷の低い業務のみを担当することが多い障害者雇用枠のオープン就労では、より負荷の高い業務を行なうポジションにステップアップすることは難しいのではないでしょうか。 より多くの業務をこなせるようになるのは、将来的に自分の価値を高めることにつながります。その点で、一般雇用枠のクローズ就労にはメリットがあると考えられます。 このように、一般雇用枠でクローズ就労をするメリットとして、「給料が比較的高いこと」「キャリアパスが豊富であること」があると言えそうです。 障害者雇用枠では高い給与や豊富なキャリアパスは不可能? なお、近年では、これまでの実務スキルや知識を活かし、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえる障害者枠求人も増えてきました。また、スキルや知識がなくても、積極的に多くの仕事をしたいと伝えれば色々やらせてもらえる職場も、まれにですがあります。 筆者も、1社目の会社で、障害者雇用枠で採用されたものの、当初求人票に書かれていた業務以外の仕事を多くするようになった経験があります。しかし、その結果「あの人は普通に仕事を振っても大丈夫」と思われて、どんどん仕事が増えていつしかコントロールが効かなくなってしまい、負荷に耐えきれず筆者は休職することになってしまいました。 障害者雇用枠で働きながらも、一般雇用枠と同様の業務を担当し同等の給与をもらえるようになるためには、体調管理や業務量の管理、きちんと障害特性への配慮が受けられるような環境でいられるかなどについて相当気を付けなければならず、まだまだ課題があると言えます。
【発達障害当事者が解説】発達障害者のためのマルチタスク対処法

マルチタスクに苦手意識のあった発達障害当事者が、特性をカバーするために編み出した「タスク管理」テクニックを紹介します。

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「仕事が溜まってしまって、どれからやればいいか分からない」「複数の仕事を同時進行するのが難しい」 発達障害、特にASDやADHDのある人は、複数の仕事が目の前にある状態、いわゆる「マルチタスク」に苦手意識を持ちがちではないでしょうか。一方で、現代では、たくさんの仕事を効率よくこなすことが要求されがちです。 発達障害のADHDのある筆者は、自らの特性をカバーする目的で編み出した「タスク管理」をメインに、マルチタスクへの苦手感を大幅に払拭できました。その経験から「発達障害者はいかにマルチタスクに対処すべきか」についてお伝えしたいと思います。この記事が、特性による困りごとのある皆さまにとって「働きやすくなるためのヒント」になることを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 なぜ発達障害者はマルチタスクが苦手なのか まずは、発達障害者、特にASD/ADHDのある人がマルチタスクへ苦手感を持つ理由をご説明したいと思います。 ASDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ASDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の2つの傾向が大きく関わっています。 シングルフォーカス特性一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。シングルレイヤー思考一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。 マルチタスクな職場では、この2つの傾向があるとなかなか難しいです。 ADHDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ADHDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の傾向が大きく関わっています。 ワーキングメモリーの弱み脳の一時的な記憶の置き場であり、作業場でもあるワーキングメモリーの機能低下により、臨機応変な対応が難しくなったり、不注意が起こりやすくなったりする。聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい。複数の作業を同時に進めることが難しい。集中し続けることや、注意し続けることが苦手。複数のことに目を配れない。など。 特に「聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい」「複数の作業を同時に進めることが難しい」「複数のことに目を配れない」といった傾向は、常に複数の仕事を抱える状況だと、困りごとを生みやすくなります。 ※上に挙げた話の詳細は、大人の発達障害とはでご説明しています。ぜひ参考になさってください。 そんなASD/ADHDのある人は、「マルチタスクな職場」にどう対応していけば良いのでしょうか。
【発達障害当事者が解説】「仕事がうまくいかない」対策と継続のコツ

「仕事がうまくいかない…」を乗り越えるための対策を筆者の実体験をまじえご紹介。対策を立てた後に『継続』するためのコツもお伝えします。

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「仕事がうまくいかない」「同じようなミスを繰り返してしまう」 発達障害の特性がある方にとって、「仕事がうまくいくかどうか」はかなり大きなテーマでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)の当事者である筆者も、過去に仕事でミスや失敗をして落ち込み、不安感にさいなまれる経験をしてきました。 平成29年に発表された厚生労働省の発表によると、精神障害者の障害者雇用の離職理由について「仕事内容があわない」「作業、能率面で適応できなかった」という項目が上位にきています。また、日本国内の企業の99.7%を占める中小企業のうち、障害者雇用の定着の理由として「作業を遂行する能力」を挙げる企業が一番多いという調査結果も出ています。 参考文献:障害者雇用の現状等|厚生労働省 発達障害特性への対策は世にたくさん発信されています。一方で、発達障害のある方の離職率が劇的に低くなったという話は聞きません。つまり、対策を知ったとしても、それを実際の自分の業務に生かすことが難しいのではないでしょうか。 今回の記事では、発達障害のある方によくある失敗とその対策、そして、対策を継続し習慣化していった筆者の体験談をお伝えします。皆さんが少しでも職場で長く違和感なく働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害当事者によくある失敗 発達障害の特性があると、以下のような失敗をしがちです。それぞれについて、原因と対策を挙げてみます。今回ご紹介をする【原因】は、あくまでも一例です。特性は一人ひとり異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。 ① ケアレスミスが多い 【原因】 一般に、「記憶の抜け漏れ・忘れ」はケアレスミスにつながりやすいと考えられます。発達障害の特性の有無と、「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力の間には関連性があることが指摘されています。 参考文献:「ワーキングメモリと実行機能の発達」|発達心理学研究 2019,第30巻,第4号,173-175 【対策】 ワーキングメモリの働きを自分でコントロールすることはなかなかできません。頭の中だけで覚えておこうとするのではなく、紙のノートやPCのメモ帳に書き出して保存することが、簡単ながら一番効果的な対策です。電話を受けたらメモをする、口頭で指示を受けたらToDoリストに書き出すなど、確実に残る記録としていつでも参照できるようにしておくことが大切です。 ② 納期を守れない 【原因】 発達障害の特性の1つとして、不安が強く心配性であるため、失敗・挫折への恐怖が強いという傾向があり、仕事(やるべきこと)の先延ばしをして納期を破ってしまいがちだとされています。 参考文献:ひきこもり支援者読本 第2章「ひきこもりと発達障害」|内閣府 【対策】 「できないかもしれない」と思ってしまう仕事は「失敗せずやれる」と思えるような細かい作業手順に分解することでその不安や恐怖を取り除きます。すると、とりあえず手を付けることができるようになります。その結果、先延ばしを避けて納期通りにやるべきことを終わらせることができます。 ③ 優先順位を間違える 【原因】 やるべきことが複数あり、そのどれから着手するかを決める、いわゆる「優先順位づけ」についてもまた、発達障害当事者は困難を抱えがちです。それは、目の前の作業に没頭するあまり、全体と部分の把握を適切に切り替えることが難しかったり、先々の展開を想像することが苦手だったりすることが原因といっても良いでしょう。 参考文献:注意欠陥/多動性障害児を対象とした課題解決場面におけるメタ認知を促すための支援方法に関する事例的研究|上越教育大学大学院 【対策】 「手を付けなければいけない順番」の指標として締切を意識します。締切を意識することで、早く終わらせなければいけないのはどれかが分かり、正しく優先順位づけをすることができます。 このように、それぞれ原因を知り対策を講じることで、よくある失敗を事前に避け、仕事の質を上げることができます。しかし、対策を講じたは良いが続かなかった、飽きて途中で辞めてしまったといった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そこで、筆者の「挫折してしまった(継続できなかった)経験」と「うまく継続できた経験」を対比して、対策を習慣化するコツをお伝えします。
【発達障害当事者が解説】無理なく働き続けるための特性理解と対策

長く健康的に働き続けるためにはどうすればいいのか。筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。

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「仕事がうまくいかず長続きしない」「職場の環境と合わなくて、短期離職を繰り返してしまう」 令和2年に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害のある方が1年間就労を継続できている割合は50%を切っており、定着が困難な方が多いと解説されています。 参考文献:障害者雇用の促進について関係資料|厚生労働省 発達障害の注意欠如・多動性障害(以下ADHDと表記)の当事者である筆者の就労経験からしても、最後に勤めた会社を除き、思ったほど長続きしなかった印象があります。障害者雇用枠で就労していた会社は4年強で休職し、一般雇用枠で就労していた会社は2年と持たずに休職してしまいました。実際は休職に至るまでかなり長い期間をかけて「就労環境とのミスマッチ」が生じていたので、適切な環境で就労できていた年数は、それよりもずっと短いという印象です。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。皆さんが健康で長く働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害のある方が仕事が長続きしない原因とは 仕事が長続きしない原因は「①仕事内容とのミスマッチ」「②職場環境とのミスマッチ」の2つと考えられます。 仕事内容とのミスマッチ 曖昧な内容が理解できないことで空気が読めなかったり、衝動的に思いついたことをしゃべったりといった発達障害の傾向は、周囲の人たちとのコミュニケーションがうまくいかなくなることにつながりがちで、仕事内容とのミスマッチが発生する可能性があります。 例えば、接客業はお客様とのコミュニケーションありきの仕事なので、お客様とのやりとりがうまくいかなければ、そもそもその仕事にマッチしないということになります。 職場環境とのミスマッチ さらに、せっかく仕事内容とはマッチしていても、例えば遠隔地にあるオフィスに通うための長時間の満員電車の混雑に耐えられなかったり、騒がしいオフィス内で発達障害の特性による聴覚過敏から集中できなかったりといった、職場環境とのミスマッチを生んでしまうこともあります。 筆者の事例 筆者も発達障害の特性によるミスマッチに悩まされた一人です。 「先延ばしグセ」がもとで期日に厳しい公共機関へ提出する報告書に手を付けずクレームを受ける「段取り下手」で社内イベントの準備がうまくできない「マルチタスクが苦手」なあまり名刺発注業務と社内備品の発注と来客対応の優先順位がうまくつけられない「抜け漏れ」でついさっき頼まれた仕事を忘れる「自己関連付け」(何か良くないことが起こったとき自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう)で通常どおりに使用していたプリンターが壊れた際に自分が原因があると考えてしまう このようなことが多発し仕事がうまくいかなくなる→ストレスが溜まりその傾向に拍車がかかる→より仕事がうまくいかなくなる、という悪循環に陥りました。 また、仕事がうまくいかないことで、周囲の方々との関係も悪化し、あるいはそう自分が勝手に思い込んでしまい、居場所感のようなものがだんだんなくなっていき、「これ以上仕事を続けられない」という心理状態になっていきました。 この悪循環を断ち切るには、自らの特性に応じた対策を打つことが必要です。そのためには、自分にはどういった特性があるのかをまず知ることが大事です。
【発達障害当事者が実践】職場の対人関係を円滑にするビジネスマナー3選

ASDのある方が困りごとを感じやすい「職場でのコミュニケーション」。筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコツをお伝えします。

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  • 注意欠如・多動性障害(ADHD)
  • 限局性学習障害(SLD)
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「普通に振る舞っているつもりなのに、周囲の人たちとの壁を感じることがある」「日頃の行動について注意されたが、どうしたら良いか分からない」 多かれ少なかれ、どんな人でも職場に溶け込むための悩みはあるものでしょう。ただ、周囲の様子や反応から、職場における適切な振る舞いを学ぶのは、発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(以下、ASDと表記)の特性がある方にとって苦手なことではないでしょうか。 筆者は、診断として受けているのは注意欠如・多動性障害(以下、ADHDと表記)のみですが、発達障害はスペクトラム(連続性)のあるものであり、ASDに由来する(と思われる)困りごとも体験してきました。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコミュニケーションのコツを3つお伝えします。 今回は「職場のコミュニケーション」のなかでも社会人として問われる機会の多い「ビジネスマナー」に絞ってお届けします。 皆さんが少しでも働きやすくなるように、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 ASDのある方が、ビジネスマナーが苦手な原因とは ASDの特性がある方は、場の空気を読むなどして暗黙のルールを認識することが苦手とされています。 参考文献:発達障害者の就労上の困難性と具体的対策 ─ASD 者を中心に|独立行政法人労働政策研究・研修機構 なぜ、ASDの特性がある方は、暗黙のルールを認識するのが苦手なのでしょうか。 一般に、発達障害の特性がない定型発達の方は、「①理解できていない」状態から「②なんとなく分かる」という段階を経て「③理由が説明できて分かる」という順番で理解が進みます。 しかし、ASDの特性がある方は、「②なんとなく分かる」というプロセスがないことが研究で分かっています。つまり、「①理解できていない」の次が「③理由が説明できて分かる」なのです。 これは、言葉で分かるようにならないと理解ができないということと、一度理解したことを「なんとなく」変更する柔軟な対応が難しい(マイルールへのこだわりがある)ことを意味します。 参考文献:他者理解の発達再考―直感的他者理解をめぐるASD(自閉症スペクトラム)研究を通して―|東洋大学 どの職場でも「これは言わなくても守って当たり前」と思う「暗黙のルール」は存在します。そして、色々な職場に共通する暗黙のルールが「ビジネスマナー」としてまとめられ、明文化されないまま社会全体に広まっていったと考えて良いでしょう。これは、言葉以外の意味合いを重要視する日本ならではの文化かもしれません。 ただし、ASDの特性がある方がこのような文化の中でうまくコミュニケーションをとっていくのは、上記の内容から分かる通り、難しいと言わざるを得ません。 そんな発達障害の、特にASDの特性がある方が、職場でのコミュニケーションを円滑にするためにはどうすればいいのでしょうか。具体的な対策としてのビジネスマナーを、筆者の失敗事例を通してお伝えしていきます。
発達障害のある方の合理的配慮事例|職場コミュニケーション編

発達障害の特性により「職場でのコミュニケーションが苦手」という方に向け、実際に提供されている合理的配慮事項と自己対処法をセットで紹介します。

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合理的配慮とは、「障害による困りごとへの配慮を、企業や自治体、教育機関等の事業主(※)に求めることができる」という制度です(※以下、本文では「職場」と表記します)。合理的配慮について職場と調整をすることは、発達障害のある方が安定して長く働いていくために大切なポイントとなります。 では、具体的にどんな内容であれば、職場に合理的配慮を求めることができるでしょうか。 今回は、発達障害の特性がある方が抱えやすい「コミュニケーション」の苦手に対する配慮事例を紹介をします。 [toc] 相談前に押さえておこう〜合理的配慮の前提となる自己対処〜 「合理的」と付いているのには理由がある。 「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法律では、障害のある方に対し職場は合理的配慮の提供をおこなうことを義務づけています。 ただし、「障害者が求めたことは、どんな内容でも配慮してもらえる」というわけではありません。 法律では、職場が合理的配慮を提供する場合に「負担が重すぎない範囲で」と定められています。職場の側に配慮を求めるだけでなく、障害者の側も「自分でおこなえる対処」を提示して、互いに無理のない範囲をすり合わせることが必要です。 これが、単に「配慮」ではなく「合理的配慮」と書かれている理由です。 「合理的であるかどうか」を判断するポイントは、「障害が原因となる困難さのうち自己対処では対応しきれないことであり、かつ職場側にとっても重い負担がなく提供可能な範囲かどうか」ですので、しっかりと押さえておきましょう。 なお、合理的配慮については以下の記事で詳しく解説しています。実際に職場と合理的配慮の相談をする前に、ぜひご一読ください。 参考・合理的配慮とは?基礎知識をまとめました。・「合理的配慮」申請マニュアル 流れとポイントを紹介・合理的配慮のよくある質問集 次ページ:具体的にどのような相談をしたらいいの?
当事者対談企画「特性対策、どうしてる?」

発達障害の当事者2名によるインタビュー対談です。「障害特性への対策(自己対処)はどのようなことを行っているか」をテーマに「当事者のリアル」をお伝えします。

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今回は、発達障害の当事者2名による対談をお届けします。 最近はインターネットだけでなく、テレビや新聞などの一般的なメディアでも発達障害について見聞きすることが増えてきました。著名人が自身の発達障害について告白する記事や動画を見かけることもあります。 そうした情報を見て「自分は発達障害ではないか」あるいは「自分の子どもは発達障害ではないか」と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 人は誰しも「自分がよく知らないものごと」については不安を感じるもの。当事者同士のリアルな事例を知ることで、少しでも不安が和らいだり、誰かに相談するなど「次のステップ」を踏み出したりするためのお力になれれば幸いです。 第2回は「自分の特性にどんな対策をしているのか」をテーマに、対談をおこないました。 参考記事 「自分の障害に気がついたのは、いつ・どのようなきっかけだったのか」をテーマにした第1回の対談記事は、以下よりご覧いただけます。 本記事は当事者同士の対談のため、発達障害に関する用語でお分かりになりづらい部分があるかもしれません。「大人の発達障害」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。 大人の発達障害とは | 就労移行支援事業所ディーキャリア [toc] 対談者紹介 とり(デザイナー 兼 イラストレーター) 24歳のときに注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の診断を受ける。タイプは“不注意優勢型”。 注意の持続や切り替えに困難を感じる事が多く、「忘れ物や失くし物が多い」「周りの音が大きい状況だと話の内容をうまく聞き取れない」などの困りごとがある。 現在は、福祉系のベンチャー企業でデザイナー兼イラストレーターとして働く。 二次障害として“起立性低血圧”があるため、職場と合理的配慮の調整を行い、ほぼ在宅で勤務できるようにしてもらっている。特性対策として、デスクにパーテーションを設置したり、カフェイン成分の入った飴やコーヒーを摂取したりして、集中力をコントロールできるよう工夫している。 ※本記事の挿絵イラストは、とりさんが制作してくださったものです! 藤森ユウワ(ライター・編集) 36歳のときにADHDと自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の診断を受ける。 子どものころから「コミュニケーションが苦手」「段取が悪い」「集中力が続かない」などの困りごとがあり、社会人になってからも生きづらさを感じつつ何とか働いていたが、あるとき仕事内容が大きく変わったことがきっかけで困難が表面化し、休職や離職を経験。 現在はベンチャー企業の社員として働きながら、兼業で個人事業主としてもライター・Webディレクターとして活動。自分の凸凹を補うためにITツールを使って工夫するのが好き。 対策①片付けができない → 細かな管理は諦めてザックリ整理 私は片付けがとても苦手で、仕事机の上がいつも書類だらけになってしまうんですよね。とりさんはどんな対策をされていますか? 私は「自分の視界から外れると、すぐに存在を忘れてしまう」という傾向があるので、その対策として、自宅ではコルクボードを活用しています。例えば“免許証の更新ハガキ”や“定期健診の案内”のように「期限があり忘れてはいけないもの」は、すぐ目に入るよう広げた状態にしてコルクボードに貼るようにしているんです。ボードは仕事机の前に置いてあるので目に入りやすいですし、次のアクション(例:免許の更新に行くスケジュールを立てる)にもつなげやすいんですよ。 なるほど、片付けるだけでなく「次にどんなアクションをすべきか」ということも大切ですよね。私も忘れちゃいけない用事は、その場ですぐにスマホのリマインダーアプリに入れるようにしています。一方で、書類の管理はあまりうまくできてなくて…書類をスキャナーで読み取りPCで整理してるんですが、「スキャンする」というアクション自体が面倒になってしまって、結局、書類トレーにがさっと全部放り込んでいるだけになりがちですね…。 分かります…私もスキャナを使っていたことがありますが、面倒で心が折れました。だから、アクションが起こしやすいかどうかって重要だと思います。私は細かくキレイに整理するのが苦手なので、ファイルにガムテープを貼り、中に入ってるものを油性ペンで書いて、ザックリ整理してます。アナログだしぜんぜんスマートじゃないんですが、特性への対策だと割り切ってやっていますね。これってある意味、世間一般の「こうあるべき」っていうイメージをどこまで捨てられるか、だと思うんです。例えば、女性の場合だと「かわいく・オシャレに整理整頓するのが当たり前」のようなイメージがありませんか? たしかに。雑誌やCMなんかでも「オシャレに整理整頓しよう」みたいな売り出し方がされてますよね。かわいいファイルや手帳を使って、マスキングテープでデコって…みたいな。 そう。「それが女子のたしなみ」みたいなイメージがある。でも、それって企業側がマーケティングのために作ってるイメージなんですよね。私もキレイに整理されたオシャレな部屋に憧れますけど、たとえザックリだったとしても、自分の特性に合う方法で整理ができている方が大事だなって思うんです。その結果、特性対策優先の部屋になっているので、お客さんが呼びづらいという難点はありますが(笑) なるほど。ちゃんと特性への対策ができて、自分に最適化されていればいいんだって割り切ると、気持ちも楽になりそうですね。 次ページ:忘れ物・無くし物の対策はどうしてる?
発達障害ある方はストレスを感じやすい?~原因と対策を解説~

健康で長く働いていくためには、ストレスをうまくコントロールすることが欠かせません。今回は発達障害のある方がなぜストレスを感じやすいのか、その原因と対策を解説します。

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「この仕事、ちゃんと締め切りまでに終わらせられるかな…」「あの人ちょっと苦手だけど、仕事ではうまく付き合っていかなきゃ…」「また失敗して、上司から怒られたら嫌だな…」 社会に出ると誰しも何らかのストレスを抱えながら生きているものですが、特に発達障害のある方は、その特性からストレスを感じやすい傾向があると言われています。 健康で長く働いていくためには、ストレスをうまくコントロールすることが欠かせません。今回は発達障害のある方がなぜストレスを感じやすいのか、その原因と対策を解説します。 [toc] 1. 発達障害のある方がストレスを感じやすい原因 発達障害とは、先天的な脳機能の障害によって生活・仕事の環境や人間関係にミスマッチが起こることで、生きづらさが生じる障害です。 社会人として働き始めると、責任が増え人間関係も広くなるため、例えば以下のような場面で発達障害の特性による困難さがミスマッチを起こしてストレスを感じやすくなります。 ・人とのコミュニケーションが苦手 → 職場での人間関係づくりがストレスに ・忘れものなど不注意によるケアレスミスが多い → 上司から注意される回数が増えてストレスに ・感覚過敏によって目や耳からの刺激を苦痛に感じる → 通勤中やオフィスの環境は簡単に変えることができないためストレスに また発達障害のある方は、脳の中で抑うつや不安に関連する部分に特徴があり、生物学的にストレスへの耐性が弱いという研究結果*もあります。 *参考:就業経験のある発達障害者の 職業上のストレスに関する研究(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター、2018年4月) 発達障害は「社会性の障害」と言われており、周囲の環境によって困難が生じることがあります。発達障害の特性によって周囲とうまくいかず、ネガティブな経験が積み重なり日常的にストレスにさらされることで「二次障害*」を引き起こすこともあるので、注意が必要です。 *参考:【事例紹介】発達障害による「二次障害」とは?原因と対処・予防法は 次ページ:ストレスをうまくコントロールするための対策法とは?
発達障害は治る?治らない?〜治療法の 5 つの疑問について解説します〜

発達障害の診断を受けたあとはどのような治療を行うのか、症状は改善したり治ったりするものなのか。当事者の方や、サポートをされているご家族や同じ職場の方々にとっては、気になることではないでしょうか。今回の記事では発達障害の治療法に関する 5 つの疑問について解説します。

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発達障害の診断を受けたあとはいったいどのような治療を行うのか、症状は改善したり治ったりするものなのか。当事者の方や、サポートをされているご家族や同じ職場の方々にとっては、気になることではないでしょうか。 日本公衆衛生学会が行った調査 [*} によれば、「”発達障害”を聞いたことがある人」の割合は 91.5% なのに対し「どのような対応や支援を行えば良いか」を具体的に知っている割合は 26.5% だったという結果が報告されています。 * 出典:「発達障害に対する成人の認知および情報源に関する現状」日本公衆衛生雑誌/66 巻 (2019) 8 号 障害について知っておくことは、障害と向き合いながら日々の生活や仕事を行っていくために大切なことです。今回の記事では、診断を受けたあと実際にどのような治療を行うのか、発達障害の治療法に関する 5 つの疑問について解説します。 [toc] Q1. 発達障害は「病気」なの? 発達障害は、先天的な脳機能の障害と言われています。 大人になってから発達障害の診断を受けた場合でも、「本人も周囲も発達障害のことを知らず気が付かなかった」「子どものころは親や先生のケアがあって、生きづらさが表面化していなかった」ということがほとんどで、「大人になってから発達障害が(病気のように)発症した」というわけではありません。 発達障害について行政(厚生労働省、文部科学省など)が公開している情報では、発達障害が病気である旨の記載はされていません。 参考 ・発達障害|厚生労働省 ・発達障害について|文部科学省 ・発達障害って、なんだろう?|政府広報オンライン 一方で、発達障害の特性による困難さやストレスが原因となって「うつ病」など別の病気が二次障害として起こってしまうケースもあります。「二次障害」については、過去のコラム記事もご参照ください。 【事例紹介】発達障害による「二次障害」とは?原因と対処・予防法は 次ページ:発達障害は治るもの?どんな治療法があるの?