発達障害のある方がつまずきやすい「職場の暗黙の了解」とは?具体例と対策を解説
はじめに
就職を目指す発達障害のある方にとって、業務そのもの以上に難しく感じられるのが「職場の空気」や「暗黙の了解」です。
たとえば、「定時で帰っていい」と言われて帰ったら、翌日からなんとなく冷たい視線を感じる…そんな経験はありませんか?
実は、発達障害のある方は、相手の意図や空気を察するのが苦手な傾向があります。そのため、「言葉通り受け取った結果、トラブルになる」「なぜ怒られたのか分からない」といった困りごとが起こりやすいのです。
この記事では、職場にある“見えないルール”=「暗黙の了解」について、具体的な例と対処法を紹介します。

暗黙の了解とは?
「暗黙の了解」とは、言葉にはされていないけれど、みんながなんとなく守っている“職場のマナー”のようなものです。
明確に指示されていないために、気づけなかったり、うまく対応できずに「協調性がない」「常識がない」と誤解されることもあります。
特に「空気を読んで、周りに合わせる」ことが特性上苦手になりがちな、発達障害がある方にとっては鬼門となることが多いです。
具体的な“暗黙の了解”の例とつまずきポイント
1. 「定時で帰っていい」と言われても、周囲に合わせて残業が当然?
- 表向き:「定時で帰っていいですよ」
- 実際には:「みんなが残っているから自分も残るべき」
- つまずき:言葉通り帰ったことで「やる気がない」と思われる
- 自分でできる対処法:職場の雰囲気を観察し、周囲の状況に合わせて残業するか、退勤するか決められるとよいです。自分の仕事が残っているのであれば、キリのいいところまで片付けて帰る、同僚が忙しそうであれば、一言「何か手伝えることはありますか?」と確認してみる、といった対処が考えられます。
2. 昼休憩は1時間だけど、実際はちょっと早めに戻る空気
- マニュアルでは「12:00〜13:00休憩」
- 実際は「12:55には着席しておくべき雰囲気」
- つまずき:時間通りに戻っても「だらしない」と見られることがある
- 自分でできる対処法:職場の人の行動をよく観察し、自分なりの「アラーム設定」などでリズムを整えておくと安心です。周りが5分前行動をしているのであれば、納得できなくても、それがこの職場の「マナー」なんだな、と考えて、周りに合わせた5分前行動をするのがよいでしょう。
3. 「困ったら聞いて」と言われても、実際は自分から動くのが前提
- 表向き:「何でも聞いてね」
- 実際:「自分から主体的に聞きに行くのが普通」
- つまずき:遠慮して聞けなかった結果、「受け身な人」と評価される
- 自分でできる対処法:疑問点をメモしておき、「〇〇の件、5分ほどお時間いいですか?」と声をかける練習をしておく
4. 「報・連・相」は空気を読んでおこなう
- どのタイミングで、どのくらいの頻度で報告するかは明文化されていない
- 忙しそうな人には話しかけにくく、タイミングを逃して怒られることも
- つまずき:「なんで今言うの?」と注意されるが、適切なタイミングが分からない
- 自分でできる対処法:伝えたいことを簡潔にメモにまとめ、Slackやメールで先に送るなど、複数の伝達手段を持っておく。いつ報告するのか、指示を受けたタイミングで相手と決めておく。
5. 指示された仕事が終わった後の動き方
- 指示:「この作業をやっておいて」
- 暗黙:「終わったら次のことを自分で探す」「他の人を手伝う」
- つまずき:終わったら座って待っていたら「気が利かない」と言われる
- 自分でできる対処法:「次に何かできることはありますか?」と上司や先輩に声をかけるクセをつけておく
発達障害特性と「空気の読みづらさ」
ASD(自閉スペクトラム症)のある方は、文脈や行間、非言語のやりとり(表情・声のトーン・雰囲気など)から相手の意図を読み取るのが苦手な傾向があります。
また、ADHDのある方も注意力が分散しやすく、場面に応じた「今、何をすべきか」の切り替えが難しい場合があります。
そのため、こうした暗黙の了解を「わざと無視している」と誤解されてしまうこともあるのです。
職場でのサポートヒント
1. 暗黙のルールを言語化しておく
- 「この職場では、昼休憩から5分前に戻る人が多いよ」など、職場での暗黙のルールを具体的に伝える
2. モデルケースを紹介する
- 「こんなとき、Aさんはこう動いていたよ」など、ロールプレイや事例共有で理解を深める
3. “わからないことは聞いてOK”という環境づくり
- 「聞いてもいいんだ」という安心感を作ることで、確認する力を育てていく
まとめ
発達障害のある方にとって、職場の「暗黙の了解」はとても大きなハードルです。
でも、ハードルの正体が分かれば、越える方法も見えてきます。
就労移行支援では、こうした見えにくいルールを整理し、一人ひとりに合わせた“働きやすさ”を一緒に考えていくことができます。
「自分らしく働きたいけど、どうすればいいか分からない」
そんなあなたは、まずは一歩踏み出して相談してみてくださいね。

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