発達障害とワーキングメモリ|「負担を減らす」ことが解決の糸口

こんにちは!
ディーキャリア川崎オフィス、生活支援員の伊藤です。
「指示を聞いた直後なのに、もう忘れている」
「電話を受けながらメモが取れない」
こうした困りごとの背景には、ワーキングメモリの弱さが関係していることがあります。この記事では、発達障害とワーキングメモリの関係と、仕事で使える対策を、箇条書き中心でまとめました。
この記事のポイント
- ワーキングメモリは「頭の作業机」。広さには個人差がある
- ADHDなど発達障害の特性のひとつとして現れることがある
- 「鍛える」より「負担を減らす」工夫が役立つことも多い
- 対策は人それぞれ。自分に合う方法を見つけることが大切
- 就労移行支援では、特性に合った対策を一緒に探せる
目次
「自分もそうかも」と思った方へ
記事を読み進めながら、気になるところをメモしておくと、あとで相談しやすくなります。就労移行支援のディーキャリア 川崎オフィスでは、読むだけでは分かりにくい「自分の特性」を一緒に整理しています。
ワーキングメモリとは?
ワーキングメモリとは、情報を一時的に覚えながら、同時に処理する脳の働きのことです。
「頭の作業机」でイメージしてみましょう
- 机の広さ = ワーキングメモリの容量(脳のキャパシティ)
- 机の上の書類 = 今、頭の中にある情報
- 机が狭いと、新しい書類を置いた拍子に、前の書類が落ちてしまう
「電話を受けながらメモを取る」「指示を聞きながら次の作業を考える」といった場面では、この机がフル活用されています。
短期記憶との違い
- 短期記憶:情報をそのまま一時的に覚えておく
- ワーキングメモリ:覚えながら、考える・処理する
ADHD(注意欠如多動症)との関係
ワーキングメモリの弱さは、ADHDの特性のひとつとして知られています。段取りを組む、優先順位をつける、行動を調整する、といった実行機能とも深く関わっています。
ADHDのほか、ASD(自閉スペクトラム症)やLD(限局性学習症)の方にも見られることがあります。
※ワーキングメモリの傾向は、WAIS(成人)やWISC(児童)などの知能検査で確認できる場合があります。ただし、検査の数値だけで「できる・できない」が決まるわけではありません。
ワーキングメモリが弱いと、仕事でどう困る?
よくある「働きづらさ」
- 指示をうっかり忘れる
- マルチタスクが苦手(電話しながらメモが取れない)
- 口頭の指示が頭に残らない
- 臨機応変な対応でフリーズ・パニックになる
- 優先順位や段取りがつけにくい
- ケアレスミスや抜け漏れが多い
「文章作成」「説明」が苦手な背景にも
次のような困りごとの裏に、ワーキングメモリの弱さが隠れていることもあります。
- メールや報告書を書くのに時間がかかる
- 話したいことを整理して説明できない
- 話している途中で、何を言おうとしていたか分からなくなる
メールであれば「文章を書きながら全体の構成も考える」、やり取りの最中であれば「話しながら次に言うことを組み立てる」など、同時に考えることや、行動することが必要だからです。
「うっかり忘れ」とは度合いが違うことも
「業務指示をうっかり忘れる」は、誰にでもあることです。ただ、ワーキングメモリの弱さがある場合は、度合いが異なることがあります。
| 一般的なうっかり | ワーキングメモリの弱さがある場合 |
|---|---|
| 指示を忘れても、メモを見れば思い出せる | メモした紙そのものが見つからない |
| 誰に言われたかは覚えている | 誰に言われたかすら思い出せない |
これは「やる気」や「努力」の問題ではありません。脳の情報処理の特性によるものです。
ミスが重なると、心身の負担にも
ミスや叱責が続くと、自信を失い、ストレスや疲労が積み重なることがあります。その結果、うつ病や適応障害などの二次障害につながる場合もあります。「困りごとが続いているな」と感じたら、早めに相談することが大切です。
同じADHDでも「合う対策」は一人ひとり違う
たとえば「ケアレスミスが多い」という悩みでも、原因は人によって異なります。
- 指示を聞き取れていない(聴覚情報の処理が苦手)
- 聞いたが覚えていられない(記憶の保持が苦手)
- 覚えているが作業中に別のことに気を取られる(注意の切り替えが苦手)
- 確認する習慣が定着していない
原因が違えば、有効な対策も違います。
「自分に合う対策」は、試してみないと分からない
同じ悩みでも、原因によって合う対策は変わります。ディーキャリア 川崎オフィスでは、作業を通して「どんな場面で、どんな工夫が効くか」を一緒に確かめています。
ワーキングメモリの鍛え方と、負担の減らし方
まず知っておきたいこと
- 脳トレやトレーニングでワーキングメモリを鍛える方法はある
- ただし、実際の仕事の場面で効果が出るかは、まだはっきりしていないといわれている
だからこそ、「鍛える」だけに頼らず、「頭の負担を減らす」視点が大切です。机を広げるのが難しくても、机の上に置くものを減らすことはできます。
① 記憶を「外に出す」(外部化)
頭の中だけで覚えようとせず、道具に任せましょう。
- スマホのボイスレコーダーで指示を録音する
- 音声メモでその場で記録する
- リマインダーアプリで通知する
- メモ帳・タスク管理アプリに書き出す
② 見える場所に貼る(視覚化)
- 付箋をパソコンのモニターに貼る
- 今日のタスクをデスクに掲示する
- スケジュールをカレンダーで見える化する
③ 自分用のチェックリストを作る(仕組み化)
- 出勤時の持ち物チェック
- 作業の開始・終了時の確認項目
- よくあるミスを防ぐ手順書
④ 環境を整える
- 整理整頓して、探し物に使う力を節約する
- 作業中は通知を切る
- 一度に頼まれる業務を1つにしてもらう(シングルタスク化)
⑤ 規則正しい生活(睡眠)を整える
不注意や記憶の保持には、睡眠不足・疲労・ストレスが大きく影響します。
- 睡眠時間を確保する
- 起床・就寝の時間を整える
- 疲れをためすぎない
どんなに良い対策も、体調が整っていないと効果が出にくくなります。
⑥ 医療・専門家のサポートも選択肢
精神科・心療内科などで、医師や臨床心理士に相談することもできます。カウンセリングや認知行動療法など、さまざまなサポートがあります。治療や服薬については、必ず主治医とご相談ください。
職場に「合理的配慮」を依頼できる可能性も
ADHDなどの特性による困りごとがある場合、企業に合理的配慮として次のようなサポートを依頼できる可能性があります。
- 指示は口頭に加えて、文書やチャットなど、文字情報でももらう
- 業務の優先順位を明確にしてもらう
- 一度に指示する業務は一件にとどめてもらう
- 手順書やマニュアルを用意してもらう
- 静かな席で作業できるようにする
「配慮を伝える練習」もできます
合理的配慮は、「何に困っていて、何があれば働きやすいか」を自分の言葉で伝えられると、より活かしやすくなります。ディーキャリア 川崎オフィスでは、特性の整理から伝え方の練習まで支援しています。
発達障害ではなくても、ワーキングメモリは低下する
ワーキングメモリの弱さは、特性だけが原因とは限りません。次のような状態では、一時的に集中力や記憶力が落ちることがあります。
- 強いストレスや過労
- 睡眠不足
- うつ病、適応障害などの精神疾患
「最近急に物忘れが増えた」という場合は、心身の疲れのサインかもしれません。一人で抱え込まず、医療機関に相談してみましょう。
就労移行支援でできること
就労移行支援は、障害のある方が企業への就職を目指すための福祉サービスです。ディーキャリア 川崎オフィスでは、次のようなサポートを行っています。
- 特性検証・自己理解のサポート
- 自分に合った対策・ツールの検討
- 実践的なプログラムでの練習
- 就職活動・職場定着の支援
- 合理的配慮を伝える練習


