発達障害のある人に「もっと頑張って」と言う前に
発達障害のある人の忘れ物に、どう向き合えばよいのでしょうか。
「もう少し気をつけたらできるんじゃない?」と感じることはありませんか。
忘れ物が続いたり、作業の手順を間違えたりしたとき、そんな言葉をかけたくなる場面があります。本人も困っているように見えると、「頑張れば何とかなるのでは」と思うこともあるかもしれません。
けれど、発達障害のある人の困りごとは、本人のやる気や努力だけでは説明できないことがあります。
発達障害の忘れ物でも、理由は人それぞれ
たとえば、忘れ物が多い人がいたとします。
「持ち物を確認してから出かける」という対策は、一見するとシンプルです。でも、確認すること自体を忘れてしまう人もいれば、何を確認すればいいのか整理するのが難しい人もいます。出発前に予定外のことが起きると、頭がいっぱいになって確認まで手が回らないこともあります。

同じように「忘れ物が多い」という状態でも、背景にある困りごとは一人ひとり違います。
だから、「もっと気をつけて」と伝えるだけでは、本人がすでに努力している場合、うまくいかないことがあります。むしろ「できない自分が悪い」と感じて、相談しづらくなってしまうこともあります。
努力を求めるだけでなく、やり方を一緒に探す
発達障害の忘れ物への対策として、持ち物を置く場所を決める工夫があります。チェックリストを玄関に貼る、前日のうちに準備するといった方法もあります。
ただし、どの方法が合うかは人によって違います。チェックリストを作っても、見なくなってしまう人もいます。前日に準備することが負担になる人もいます。よく知られた方法でも、そのまま当てはまるとは限りません。実際に試し、本人にとって使いやすい形に調整することが大切です。
「何ができていないか」だけでなく、「どこまではできているか」「どの段階で難しくなるのか」を見ていくと、工夫できる場所が見つかることがあります。
本人の努力が必要な場面は、もちろんあります。でも、努力だけに頼らなくてもよい仕組みをつくることも、同じくらい大切です。
「できる・できない」だけでは見えないこと
発達障害といっても、特性のあらわれ方や困りごとは人それぞれです。ある場面では力を発揮できても、別の場面では強い負担がかかることがあります。
そのため、「前はできていたのに、なぜ今回はできないの?」と見えることもあります。でも、場所や相手、時間の余裕、周囲の情報量など、条件が変われば取り組みやすさも変わります。
できた経験があるからといって、いつでも同じようにできるとは限りません。反対に、今うまくいっていないことも、やり方や環境を変えることで取り組みやすくなる場合があります。
本人の困りごとを聞き、合う方法を探す
支援の場でも、困っている人に対して「こうすればいい」とすぐに答えを出したくなることがあります。けれど、その人が何に困っているのかを確かめないまま方法だけを渡しても、実際には使えないことがあります。
まずは、本人から見えている状況を聞くこと。どこでつまずくのか、何が負担なのか、どんな工夫なら試せそうなのかを一緒に考えること。そこから、その人に合った方法が見つかっていくのだと思います。
「もっと頑張って」と言う前に、頑張りやすくなる条件を一緒に探してみる。発達障害のある人に限らず、誰かの困りごとに向き合うとき、そんな視点を忘れずにいたいです。
(参考)発達障害で仕事が続かない?|職場で困りやすい7つの場面と対策
(参考)タスク管理 の話。「忘れないように頑張らない」引越しで実践している私の自己対処
参考資料:忘れやすさを理解するために
発達障害の一つであるADHDについて、米国国立精神衛生研究所(NIMH)は、物をなくすことや日常の用事を忘れることを困りごとの例に挙げています。ただし、忘れ物だけでADHDかどうかは判断できません。
成人のADHDを対象とした研究では、予定した行動を実行する場面を具体的に思い描く方法が検討されています。日常生活での実行を助ける可能性が示されましたが、予備的な結果であり、誰にでも同じ効果があるとは限りません。この記事のチェックリストや置き場所の工夫すべてを、この研究が直接検証したわけではありません。
NIMH(2024)「ADHD in Adults: 4 Things to Know」(英語・公的解説)
https://www.nimh.nih.gov/health/publications/adhd-what-you-need-to-know
Altgassen, M., Heinrich, H., & Edel, M.(2026)Journal of Attention Disorders, 30(5), 705–721。成人ADHDの将来の行動イメージと展望記憶を扱う研究(英語)
https://doi.org/10.1177/10870547261416467
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