発達障害で仕事が続かない?|職場で困りやすい7つの場面と対策
「仕事を始めても、なかなか長続きしない」
「職場の人とのコミュニケーションがうまくいかない」
「仕事でミスが続くと、自分は働くことに向いていないのではないかと思ってしまう」
発達障害 のある方の中には、仕事をする中でさまざまな困りごとを感じる方がいます。
しかし、仕事で困ることがあるからといって、「本人の努力が足りない」「仕事ができない」ということではありません。
大切なのは、自分がどのような場面で困りやすいのかを知り、必要な対策を考えることです。
また、本人の工夫だけではなく、仕事内容や職場環境を調整することも、働き続けるための重要なポイントになります。
今回は、ASD(自閉スペクトラム症)をはじめとする発達特性と就労について、研究で示されている内容を参考にしながら、仕事で困りやすいことと対策について解説します。
ASDのある人の就労について、Scottら(2019)は134件の研究を対象としたスコーピングレビューをおこなっています。
この研究では、ASDのある人が仕事をするうえでの強みや課題、就労を支援するための介入について幅広く整理されています。
研究から特に重要なポイントとして挙げられるのが、就労には本人の特性だけでなく、職場環境などの環境要因も大きく関係するということです。
つまり、「本人がもっと頑張れば働けるようになる」と考えるだけでは十分ではありません。
仕事内容、職場の人間関係、周囲の理解、仕事の進め方、支援の有無など、本人を取り巻く環境にも目を向ける必要があります。
ここからは、仕事で困りやすい代表的な7つの場面について見ていきましょう。
① 職場でのコミュニケーションが難しい
仕事では、上司への報告、同僚との相談、お客様とのやり取りなど、さまざまなコミュニケーションが必要になります。
発達特性のある方の中には、
・相手の意図を読み取ることが難しい
・どのタイミングで質問すればよいか分からない
・困っていても相談できない
・自分の考えをうまく言葉にできない
といった困りごとを感じる場合があります。
その結果、分からないまま仕事を進めてしまったり、後から大きなミスにつながったりすることがあります。
対策
まずは「分からないことを質問する」ことを練習してみましょう。
例えば、
「○○について確認したいのですが、今お時間よろしいでしょうか?」
「○○という理解で合っていますか?」
のように、質問の型を決めておくと、実際の職場でも使いやすくなります。
② 暗黙のルールや職場の雰囲気が分かりにくい
職場には、マニュアルには書かれていないルールがあります。
例えば、
「忙しそうなときは声をかけるのを避ける」
「分からないことがあれば早めに確認する」
「仕事が終わったら次の仕事を確認する」
などです。
こうした「暗黙のルール」が分かりにくいと、「なぜ注意されたのか分からない」という状況につながることがあります。
対策
分からないルールを「自分で推測し続ける」のではなく、具体的に確認することが大切です。
「次回からはどのようにすればよいでしょうか?」
と聞くことで、曖昧だったルールを具体的な行動に変えることができます。
③ 仕事内容や仕事の進め方が分からなくなる
仕事では、複数の業務を同時に頼まれたり、優先順位を自分で判断したりする場面があります。
「何から手をつければよいか分からない」
「複数の指示を覚えておくのが難しい」
「急に仕事を頼まれると混乱する」
といったことが負担になる場合があります。
対策
指示を受けたら、頭の中だけで覚えようとせず、メモを取りましょう。
また、
「①○○をする」
「②終わったら△△をする」
「③その後、□□を確認する」
というように、仕事を細かい手順に分ける方法も有効です。
必要であれば、「今はどちらを優先すればよいでしょうか?」と確認することも大切です。
④ 職場の環境が負担になる
仕事の内容だけではなく、職場環境そのものが負担になる場合があります。
例えば、
・周囲の話し声が気になる
・電話の音が苦手
・人の出入りが多いと集中しにくい
・照明やにおいなどの刺激が気になる
といったことです。
このような環境面の負担が積み重なると、仕事への集中が難しくなったり、疲労が強くなったりすることがあります。
Scottらのレビューでは、ASDのある人の就労において、環境要因が障壁にも促進要因にもなり得ることが示されています。
対策
「自分が苦手だから我慢する」だけではなく、どのような環境なら働きやすいのかを整理してみましょう。
例えば、
「静かな場所のほうが集中しやすい」
「指示は口頭だけではなく、メモでもらうと理解しやすい」
など、自分に合った環境を具体的に伝えられるようにしておくことが大切です。
⑤ 職場の人間関係に疲れてしまう
仕事を続けるうえでは、人間関係も重要な要素です。
「周囲にどう思われているか気になる」
「雑談が苦手」
「相手の言葉を深刻に受け止めてしまう」
「職場で気を遣いすぎて疲れる」
など、人間関係に負担を感じることがあります。
職場では、すべての人と親しくなる必要はありません。
対策
まずは「仕事上必要なコミュニケーション」を安定させることを目標にしてみましょう。
あいさつ、報告、連絡、相談、お礼など、仕事に必要なやり取りを一つずつ身につけることで、コミュニケーションへの不安を減らせる場合があります。
⑥ 急な変更や予定外の出来事への対応が難しい
仕事では、
「急に担当が変わった」
「予定していた仕事が延期になった」
「別の仕事を頼まれた」
など、予定通りに進まないことがあります。
対策
予定変更そのものを完全になくすことはできません。
そこで、「変更が起きたときにどう行動するか」をあらかじめ決めておくことがポイントです。
例えば、
「予定変更があったら、まずメモをする」
「分からなければ担当者に確認する」
「優先順位を確認してから行動する」
というように、対応手順を決めておきます。
⑦ 自分の困りごとを周囲に伝えられない
仕事で困っていても、
「こんなこともできないと思われそう」
「迷惑をかけたくない」
「相談するのが恥ずかしい」
と考えて、一人で抱えてしまうことがあります。
しかし、困りごとを抱えたまま無理を続けると、仕事そのものを続けることが難しくなる場合があります。
対策
まずは、自分の「得意・苦手」「できること・難しいこと」を整理してみましょう。
そのうえで、
「○○の場合は、口頭で指示をいただくより、メモでいただいたほうが理解しやすいです」
など、困りごとを具体的な「お願い」に変えて伝えることがポイントです。
働き続けるためには「本人の努力」だけで考えない
ここまで7つの困りごとを紹介しました。
ここで大切なのは、これらをすべて「本人が努力して克服する問題」と考えないことです。
Scottら(2019)のレビューでは、134研究のうち、就労介入を評価した研究は36件でした。そして、それらの介入ではASDの特性を変化させて仕事のパフォーマンスを高めることに重点が置かれている一方、仕事を取り巻く環境などの文脈的要因については十分に考慮されていないことが指摘されています。
これは、就労支援を考えるうえで非常に重要な視点です。
例えば、
「本人がもっと集中できるようにする」
だけではなく、
「集中しやすい環境をつくる」
という考え方もあります。
「本人がもっとコミュニケーションを頑張る」
だけではなく、
「指示を分かりやすく伝える」
という環境側の工夫もできます。
つまり、本人と職場のどちらか一方だけを変えるのではなく、本人と環境の両方から働きやすさを考えることが大切なのです。
自分に合った働き方を見つけるために
仕事で困ることがあると、「自分は働くことに向いていない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、困りごとは「自分に向いていない仕事」を知るためのヒントにもなります。
例えば、
「人が多い場所では疲れやすい」
ということが分かれば、職場環境を選ぶときの条件になります。
「口頭指示だけだと忘れやすい」
と分かれば、メモを取る、手順書を作るなどの対策につながります。
「急な変更が苦手」
と分かれば、変更時の対応方法を事前に決めておくことができます。
このように、
困りごとを知る
↓
原因を整理する
↓
対策を考える
↓
自分に合った環境を探す
という流れを作ることが、働き続けるための第一歩になります。
参考
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30073870/
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