「忘れっぽい」は性格?大人の発達障害(ASD・ADHD)の方が忘れ物と仕事のミスを防ぐ習慣と対策
出かける直前に鍵が見つからない。仕事の締め切りをうっかり失念していた。 「どうして自分はこんなにダメなんだろう」と、玄関やデスクの前で立ち尽くしたことはありませんか?
その「忘れっぽさ」は、努力不足ではなく、脳の特性(ワーキングメモリの弱さなど)が関係しているかもしれません。この記事では、自分を責めるのをやめて、「仕組み」で忘れものを防ぐ方法を一緒に見つけていきましょう。

【筆者紹介】
ディーキャリア郡山オフィス 就労支援員・社会福祉士の石黒 千春です。
支援員の視点と人事経験を活かした視点で、就職活動の支援をおこなっています。
ちなみに私は、欲しい本をすでに買っていたことを忘れてしまって、同じ本をもう一冊買ったことがあります。
就労移行支援とは、障害のある方が就職するための「訓練・就職活動」の支援をおこなう障害福祉サービスです。ディーキャリア郡山オフィスは、大人の発達障害に特化したコンテンツで長期的な就業に向けたサポート。あなた本来の力を発揮するための自己理解がテーマです。就職はゴールではありません。社会で活躍し続けることを目指すための就労移行支援です。
忘れっぽいとどうなる?
早速ですが、忘れっぽいとどうなるでしょうか?
・必要なものが用意できない
・物事が予定通り進まない
・結果的に約束を破ってしまう
などでしょうか。
仕事でも、私生活でも、「忘れもの」や「忘れごと」はない方が望ましいですし、誰もが、準備物や約束を忘れたくて忘れているわけではないと思います。
自分が忘れっぽいということで悩んで方もいらっしゃると思います。
仕事で忘れもの・忘れごとをするとどうなるでしょうか?
・物事によっては重大な問題を引き起こす
・信用を失う
ということが起こり得るのではないでしょうか。
これは、障害者雇用枠でも同じで、社員でもパート・アルバイトでも、フリーランスでも同じです。
発達障害のある方の場合、仕事での「忘れ」をきっかけに、うまくいかない自分に対しての自己嫌悪や、責められたりすることでのストレスが、二次障害の要因になることもあります。
(※二次障害とは、障害特性による一次的な問題+後天的な要因(ストレスやトラウマなど)によって起こる二次的な障害のことで、うつや不安障害などもその一つです。)
「忘れっぽい」という自覚があれば対策ができますが、無自覚で過ごしてしまうと、周りを振り回してしまい、段々と人が離れていくということになりかねません。
このようなことは、仕事を長く続けていくためにも、避けたいところです。
忘れものは誰にでもあることではないかと思います。そのため、自分自身がどのような時に忘れものをしてしまうのか?その特徴を知って、適切な対策を実施して一つ一つ減らしていくことで、仕事も人間関係もより良くを目指していくことができると思います。

大人の発達障害とは?
まず、発達障害とは何でしょうか?
発達障害者支援法では以下のように定義されています。
「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」
e-Gov 法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC1000000167
発達障害の明確な原因は解明されていませんが、先天的な脳と神経系の障害で、育て方や努力不足が原因ではない、といわれています。
学生時代の忘れものや忘れごとは、「おっちょこちょい」であるとか「抜けている」で済むことあるかもしれません。しかし、仕事では「おっちょこちょい」や「抜けている」は、「不注意」「確認不足」と捉えられることが多くなります。
そこから「ミス」「事故」「インシデント」が発生し、場合によっては取引や会社に大きな影響を与えることもあるため、特に仕事においては、「忘れっぽい」では済まされない状況も多数存在します。
発達障害は通常、低年齢で発現しますが、上記の例のように、成人になって初めて気づく場合があります。そのため、「大人の発達障害」という表現が使用されることも多くなってきています。
大人の発達障害では特に、ASD(自閉症スペクトラム障害/アスペルガー障害なども含む)、ADHD(注意欠如・多動性障害)に触れていることが多く、それぞれ、以下のような障害特性があります。
【ASD(自閉症スペクトラム障害/アスペルガー障害なども含む)の障害特性の一例】
・社会的コミュニケーションや対人コミュニケーションの苦手
・限定的な興味やこだわりの強さ
・感覚的な刺激に対しての過敏や鈍感
【ADHD(注意欠如・多動性障害)の障害特性の一例】
・不注意(忘れっぽい、集中力の持続が難しい、など)
・衝動性(じっとしていられない、感情的になりやすい、など)
・多動性(しゃべりすぎる、考えよりも先に行動しがち、など)
発達障害のある方はなぜ、忘れっぽいのか?
以下に、ASD・ADHDの方が忘れっぽくなってしまう例を紹介します。
【ASD(自閉症スペクトラム障害/アスペルガー障害なども含む)の場合】
・限定的な興味や強いこだわりによって、会話の内容に興味が持てない
・予想外の変化やできごとが苦手で、混乱したり、パニックを起こしたりして、思考停止になる
・聴覚が敏感で、複数の情報が(音や言葉など)耳から入ってくると処理しきれない(聴覚過敏・感覚過敏などいいます)
【ADHD(注意欠如・多動症)の場合】
・他のことや周囲の刺激に気を取られてしまい、話を聞き逃してしまう
・その時は分かっても、集中力の欠如や他の刺激に気を取られてしまうことで、後回しになり、忘れてしまい、結果としてやらない
発達障害の特徴として、複数の発達障害が併存する場合があるといわれています。
ディーキャリア郡山オフィスの利用者の方や相談にいらっしゃる方でも、複数の障害が併存している方は珍しくありません。
発達障害の併存の有無に関わらず、障害特性は人それぞれ症状の強弱・濃淡は異なりますので、単純に特徴に当てはめることはできません。物事の状況や周囲からの影響など、複数の視点から観察することが必要です。
また、ワーキングメモリの弱さを感じている方も多くいらっしゃいます。極端な例ではありますが、1つか2つのことは覚えていても、3つになると容量オーバーになり、1つ忘れてしまうといったイメージです。
ワーキングメモリとは
ワーキングメモリ(working memory:作業記憶、作動記憶)とは、ワーキングメモリとは、外部から入ってきた情報を一時的に記憶し、処理する能力です。
発達障害のある方には、「マルチタスク」(複数のことを同時進行でおこなうこと)が苦手な方が多いことや、忘れっぽい、記憶力がよくない、といわれる方が多いことの要因の一つに、ワーキングメモリの弱さがあります。
例えば、「脳の机の広さ」です。発達障害のある方は、この机が少し小さかったり、机の上がすぐに散らかったりしやすい状態。だからこそ、「机に置かずにメモ(外部メモリ)へ逃がす」ことが重要です。
忘れもの・忘れごとを防ぐためには、このような障害による特性を理解しつつ、具体的な対策を実行していく必要があります。
忘れものを防ぐために必要な対策

ここまでお読みいただいた方は、発達障害のある方が、なぜ忘れもの、忘れごとが多いのか、なんとなくお分かりいただけたかと思います。
また、多くの方が「覚える気がない」であるとか、「そもそも聞く気がない」ということではなく、物事を実行していくことについて、障害特性上、難しいことがあるということもご理解いただけたかと思います。
では、ここからは具体的な対策を紹介していきます。
メモを取る
基本的な対策です。書くことによって、見る・聞くだけよりも記憶に残りやすくなります。学校や資格の勉強と同じ要領ですね。
「メモはとっているのだけど・・・」という話もよく聞きますが、「メモは書いたけど、どこに書いたのか分からない」という方が多いです。つまり、内容を整理できていないということですね。
闇雲に書くのではなく、「何のために書いているのか?」、「どうすれば自分が確認しやすいか?」ということなどを考えながら書く必要があります。
しかし、「話を聞きながら」、「内容を整理しながら」、「どうすれば後から確認しやすいか?を考えながら」メモを書く、ということは難しいのではないでしょうか?マルチタスクですね。
そのマルチタスクを避けるためには、自分に合うツール・道具(手帳など)をあらかじめ用意して、使い方を知っておく必要があります。
手で文字を書くことも大切ですが、スマートフォンやパソコンを利用してみる方がやりやすい、という方もいらっしゃると思います。しかし、シチュエーションによっては使えない場合もあります。
会話中の操作は、話を聞いていないと思われてしまう、別のことをしていると思われてしまう、サボっているように見えてしまう、といった可能性があります。
(どうしてもデバイスを使う必要がある方は、相手に事前に相談、お願いしておく方がよいでしょう)
中には「私は記憶力が良いので書かなくても分かる」という方もいらっしゃると思いますが、メモを書く姿が話し手に安心感を与えることもあります。
メモを書いている様子が見えることで「熱心に聴いてくれている」、「安心して話せる」という印象につながりますので、記憶力が良い方も副次的な効果を狙って、メモを取ることをお勧めします。
ToDoリスト/タスクリストを使う
ToDoリストを使用することも、忘れないためにおこなう対策の一つです。ToDoリストはタスクリスト、やることリストなどと呼ぶこともあります。
ノートやメモ帳を使って、必要なもの、やること(ToDoやタスク)を書き出しておくことで、やるべきことが管理しやすくなります。
済んだことをチェックをしたり、二重線で消したりすることで、もう済んだことなのか、まだやっていないことなのか、簡単に分かります。
書いたメモを整理しながら、やるべきことをまとめておくと、なお良いと思います。メモをした内容の振り返りになりますし、思考の整理にもなります。
もし、そこで疑問があれば確認をすることで、自分がすべきことがはっきりしますし、確認したことで不安なく行動できるのではないでしょうか。
ToDoとし書き出しておくことで、忘れもの、忘れごとを減らすだけでなく、確認作業にも役に立ちます。また、グループやチームで共有することで、お互いの進捗を把握することもできます。
実際に、プロジェクトの進行やイベントの準備などでは、ToDoリストを共有することはよくあることです。うまく使いこなすことが、マネジメントや進行管理にも役立ちますので、立派な仕事のスキルの一つといえるのではないでしょうか。
リマインド
リマインドには「思い出させる」というような意味があります。英語の「remind」です。
リマインドには大きく2種類あります。
1つは自分自身で行うリマインド、もう1つは他者にお願いするリマインドです。
自分自身でおこなうリマインドは、忘れないようにメモを貼っておく、メモを読み返す、ToDoリストを確認する、スマートフォンやパソコンに通知を表示させるなどが、自分自身でおこなうリマインドです。
さらに具体的な方法としては、
・出かける前に確認できるように自宅の玄関にメモや小さいホワイトボードを貼っておく
・「確認する」という行動をあらかじめ手順の一つにしておく
・カレンダーアプリなどの予定に通知の設定をしておく
などがあげられます。
基本的には自分自身で管理ができる状態を目指す必要がありますが、場合によっては他者にリマインドをお願いすることもあります。
例えば、声をかけてもらう、リマインドメールをお願いするなどです。
リマインドをお願いする場合のポイントは、お願いが先行してしまわないように気を付けることです。自己対処より先にお願いが先行してしまうことで、「やるべきことをやっていない」、「できる努力をしていない」、「ただのわがまま」というような悪い印象を与えてしまう可能性がありますので、ご注意ください。
参考までに、筆者自身が忘れもの、忘れごとを防ぐために使用しているツールを紹介します。
好みや仕事の内容によって必要なツール、方法は異なりますので、「そういうやり方もあるんだな」と、参考程度にご覧ください。
【メイン】Googleカレンダー
私のスケジュール管理、タスク管理のメインは、Googleカレンダーです。期限のない仕事、何かのために確保したい時間などは、とりあえずタスクとして登録し、重要度や緊急性の度合いで色を変えて、自分に分かるようにしています。Googleカレンダーはリマインドの通知やメールを設定することができるので便利です。
【サブ(アナログ)】ノート
「どこに書いたか忘れる」ことを防ぐため、私はノートを1冊に集約しています。仕事もプライベートもこの1冊を見ればいい状態にし、置き場所(定位置)も決めることで、探す手間をなくしています。
【サブ(デジタル)】「Simplenote」というメモアプリ。
「Google Keep – メモとリスト」も描画ツールが使用できたり、画像が添付できたり便利ですが、私はテキストがメインであるため、テキストに特化している「Simplenote」の方が使いやすく感じています。
ここまで、1.メモ、2.ToDoリスト、3.リマインドについ紹介しましたが、日頃から思考を整理したり、集中力が削がれる要因を少なくしておくことも大切です。
さらに、忘れもの・忘れごとをしないための間接的な対策を2つ紹介します。
+αの対策も試してみましょう

1.部屋やデスクを片付ける
人は目に入るものが気になってしまうことがあります。
例えば、手元にスマートフォンがあると、つい気になってSNSを見てしまったり、それがきっかけで本来やるべきことから離れてしまう、ということが発生しがちです。
必要なものは手元に用意しておく必要がありますが、そうでないものはバッグにしまう、ロッカーや引き出しにしまうなどして、目につかないようにしておくと、集中力を削ぐ要因を少なくすることができます。
モノを置いておく場所を決めておくことで探す時間も少なくできますし、忘れものを減らすこともできると思います。
片付けは面倒に感じることもありますが、メリットも多いので、できることから、一つずつでも進めるとよいのではないでしょうか。
何より「片付けなきゃ!」というプレッシャーから自分を解放できることが大きなメリットだと思います。
2.ルーティンに組み込んで、思い出すきっかけを増やす
例えば、ゴミの日に燃えるゴミを捨てるとします。
ゴミ箱がいっぱいになったら捨てようと思っていると、ゴミを捨てるきっかけは1つです。しかし「燃えるゴミの日は必ず捨てる」ということにしておけば、ルーティーンになります。
「ゴミの日」と「いっぱいになったら」というゴミを捨てるきっかけを2つにすることができます。
思い出す機会を増やす、確認する機会を増やす、行動のきっかけを増やすなど、
自分が忘れないためのきっかけを複数用意しておくことも、忘れもの・忘れごとを減らすコツの一つです。
忘れっぽいことが課題だった利用者の方に聞いてみました!
忘れものが減らすための工夫を教えてください!
「ペンとA7サイズのメモ帳を携帯し、いつでもメモを書けるようにしています。話を聞きながら重要なことを瞬時に判断することは得意ではないので、指示を受ける場合や連絡事項を聞く場合は、日時や数量、準備物などポイントになりそうなことをメモしています。書いただけで終わってしまうと忘れてしまうので、必ず内容を整理しています。不明な点があれば調べたり、質問したりすることで、忘れものも、不安も減らすことができています。」
今回の最後に
障害のある方が継続して働き続けるためには、ご自身の障害特性・得意・苦手などを知る自己理解→自分自身にできることは自己対処→自己対処だけでは難しいことについては合理的配慮を依頼する、ということが必要です。
知識や資格も仕事をしていくうえでの大切な要素ですが、自分自身が持っている長所を活かしたり、短所が強く出過ぎないようにするためには、ディーキャリア郡山オフィスの訓練でおこなっている、体調管理、日々の振り返り、目標の設定なども大いに役に立つと思います。
▶ 見学・相談について(無料・要予約)
ディーキャリア郡山オフィスでは、無理な勧誘は一切ありません。
利用を迷っていても大丈夫です!
Q. まだ利用するか決めていませんが、相談してもいいですか?
A. もちろん大丈夫です。半数以上の方が「まずは話だけ」のご相談です。
Q. 一人で行くのが不安です。家族と一緒でも良いですか?
A. 問題ありません。ご家族や支援者の方の同席も歓迎しています。
ひとりで抱え込まず、よければ一度ご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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