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職場でうまく話せないのはなぜ?発達障害のある方が知っておきたいコミュニケーションのズレの正体

こんにちは!
ディーキャリア川崎オフィス、生活支援員の伊藤です。

「ちゃんと聞いていたのに、なぜか伝わらなかった」
「指示の意味はわかったけど、何から動けばいいかわからなかった」

職場でこうした経験を繰り返してきた方は、少なくありません。
実は、このすれ違いの多くは能力や努力の問題ではなく、「言葉のレベルのズレ」から起きています。
今回は、その仕組みと、明日から使える具体的な対策をご紹介します。

発達障害のある方が職場の会話でつまずきやすい理由

発達障害(ASD・ADHD・SLDなど)のある方の中には、職場のコミュニケーションで次のような困りごとを感じている方が多くいます。

  • 指示を聞いた直後は理解できたつもりなのに、いざ動こうとすると何をすればいいかわからなくなる
  • 話の途中で頭がいっぱいになり、後半の内容が頭に残らない(ワーキングメモリの弱さ)
  • 相手が何を求めているのかをイメージしにくく、的外れな返答をしてしまう
  • 自分では誠意を持って接しているつもりなのに、「話を聞いていない」と思われてしまう
  • 会話の途中で感情が揺れてしまい、内容の理解に集中できなくなる

これらは意欲や努力が足りないわけでも、理解力が低いわけでもありません。特性的な認知の傾向と、コミュニケーションのスキル不足が組み合わさって起きている困りごとです。

ポイント
「なぜうまくいかないのか」を正しく理解することが、改善の第一歩です。原因がわかれば、対策も立てられます。

「言葉のズレ」の正体 ― チャンキングとは

職場の会話でのすれ違いを理解するうえで、「チャンキング(Chunking)」という考え方が役立ちます。

チャンキングとは、言葉や情報を「塊(チャンク)」として捉え、その塊を大きくしたり小さくしたりしながらコミュニケーションをとる考え方です。

言葉には「大きさ」や「広さ」があります。同じ話題でも、話す側と聞く側が異なるレベルの塊で考えていると、かみ合わないことが起きます。

塊のレベル具体的な例
大きい塊(抽象)仕事・将来のこと全般 / 生活全体のこと
中くらいの塊職場の人間関係 / スキル・キャリア
小さい塊(具体)今日の作業手順 / 上司への返事の仕方 / 相づちのタイミング

チャンキングアップ・チャンキングダウン

この塊のレベルを意図的に動かすことができます。

  • チャンキングアップ(↑):より大きな視点・抽象的な話へ移動する
    例)「今日の作業」→「全体の業務の流れ」へ広げる
  • チャンキングダウン(↓):より具体的・詳細な話へ移動する
    例)「コミュニケーション改善」→「相づちのタイミング」に絞る
よくある誤解
「話が通じないのは、自分の理解力が低いから」→ これは誤りです。
多くの場合は、お互いが異なるレベルの塊で話しているだけです。どちらが悪いわけではありません。

会話のすれ違い:具体例で見てみましょう

実際の場面でチャンキングのズレがどう起きるか、会話例で確認してみましょう。

上司
「明日、この書類作業やっておいて」
(意図:①データ入力 ②上司への確認 ③印刷・提出 の3ステップを想定している)
自分
「わかりました」
(「書類作業」=データ入力だけ、と受け取った)
上司
「書類、できた?提出先に送らないといけないんだけど」
自分
「データの入力は終わっています…」
(印刷・確認・提出まで含むとは思っていなかった)
上司
「入力だけじゃなくて、確認して提出までが”書類作業”だよ…」

上司が「書類作業」と言ったとき、その言葉の中には ①データ入力 ②上司への確認 ③印刷・提出 という複数のステップが含まれていました。
しかし「書類作業」という大きな塊をチャンキングダウン(具体的な手順に分解)せずに取り組んだため、 「入力さえ終われば完了」という認識で止まってしまい、納期に間に合わなかったのです。

このズレが起きた理由
上司は「書類作業」という言葉に複数のステップを含めて話していた(大きい塊)のに対し、 受け取った側は「書類作業=データ入力」という一つの作業として受け取った(小さい塊)。
言葉の塊のレベルが合っていなかっただけで、どちらも悪意はありません。

こうした場面では、指示を受けた時点で 「書類作業の中に含まれる手順を確認する」一言があるだけで、 このすれ違いは防ぐことができます。次のセクションで、具体的なフレーズをご紹介します。


実践:すれ違いを防ぐ確認フレーズ4選

チャンキングのズレを防ぐために有効なのが、「傾聴スキル」と組み合わせた確認フレーズです。

これらのフレーズは「理解できていないことを露呈する」ものではありません。「一緒に認識を合わせようとしている姿勢」として相手に伝わり、むしろ好印象を与えます。

📌 ① 話の範囲・レベルがわからないとき

【活用スキル】チャンキング確認 / 質問

「今おっしゃっているのは、〇〇全体のことでしょうか?
それとも、△△の部分のお話でしょうか?」

相手がどのレベルの塊で話しているかを直接確認します。「全体の話か、具体的な話か」を聞くだけで、ズレをその場で解消できます。

📌 ② 理解できているか確かめたいとき

【活用スキル】繰り返し・言い換え(パラフレーズ)

「〇〇ということで合っていますか?」
「私の理解では〜ということなのですが、合っていますか?」

自分の言葉で言い換えて相手に返すことで、お互いの認識が一致しているかを確認できます。相手にとっても「きちんと聞いてくれている」という安心感につながります。

📌 ③ 話が速くてついていけないとき

【活用スキル】ペーシング / 要約

「少し整理させてください。まず〇〇というお話でしたよね?」

「聞いていなかった」のではなく「丁寧に整理しながら聞いている」という姿勢が伝わります。ワーキングメモリの弱さをカバーするうえでも有効なフレーズです。

📌 ④ わからない部分だけを正直に伝えたいとき

【活用スキル】部分的な質問 / 傾聴の姿勢

「全体の流れは聞けていますが、〇〇の部分だけ
もう少し教えていただけますか?」

「ここだけわからない」と絞って伝えることで、「全体を理解しようとしている」意欲が伝わります。「また聞いてしまった…」という不安を軽くする効果もあります。


「伝わらなかった」経験を別の視点で見直す

職場でのコミュニケーションに苦労してきた方の中には、「自分の能力が低いせいだ」「なぜかいつも怒らせてしまう」と、繰り返しつらい経験をしてきた方もいるかと思います。

チャンキングの考え方を知ると、そうした経験を別の角度から捉え直すことができます。

⚠ これまでの受け取り方
「自分の理解力が低いから話が通じなかった」
✓ 別の視点で見ると
「お互いの言葉の塊のレベルが合っていなかっただけ。どちらが悪いわけでもない」
⚠ これまでの受け取り方
「理解しようとしているのに、それが相手に伝わらなかった」
✓ 別の視点で見ると
「確認フレーズを使えば、理解しようとしている姿勢を言葉として届けられる」

「なぜいつもうまくいかないのか」には、必ず理由があります。その理由を知り、具体的なスキルを身につけることが、職場での自信につながっていきます。


まとめ:今日から意識できる4つのこと

1
「伝わらない」と感じたとき、能力の問題ではなく「言葉のレベルのズレ」かもと考えてみる
2
相手がどの大きさの話をしているか、「〇〇全体のお話ですか?」と一言確認する習慣をつける
3
「全体は聞けているが、ここだけわからない」と伝えると、聞いていない誤解を防ぎながら質問できる
4
確認の一言は「能力不足の証拠」ではなく、「共通認識を作ろうとしている主体的な行動」として相手に伝わる
コミュニケーションのスキルは、訓練を通じて着実に身につけられるものです。
「うまく話せない」という経験が長くても、正しい方法を知れば変わることができます。
まずは今日ご紹介したフレーズを、一つから試してみてください。

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