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ASD・ADHDにみられる「ワーキングメモリ」とは―職場で生じる“環境障害”を理解するために

日常生活や仕事の中で、「聞いた内容が頭に残らない」「同時に複数のことを進めると混乱する」「忘れるつもりがないのに忘れてしまう」といった困りごとを抱えている方は少なくありません。
こうした困りごとの背景にあると言われているのが、ワーキングメモリ(作業記憶)の特性です。

特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つ方は、ワーキングメモリの働きに苦手さがみられやすいとされており、職場では「努力不足」や「やる気の問題」と誤解されることもあります。

本記事では、まず“ワーキングメモリとは何か”を分かりやすく整理したうえで、職場で起こりやすい環境障害(特性と環境のミスマッチから生じる困りごと)について解説します。

ワーキングメモリとは何か

ワーキングメモリは、短時間だけ情報を保持しながら、その情報を使って作業を進める能力と言われています。

例として挙げられるのは次のような場面です。

  • 上司の指示「Aを片付けたら、Bのデータをチェックして、その後Cさんに連絡しておいて」を覚えたまま行動する
  • 会議で出た重要事項を記憶しながら、自分の意見を組み立てる
  • 料理などで「今フライパンで炒めている」「横でお湯を沸かしている」という複数作業を並行処理する
  • 手元の作業を続けながら、次にやるべきことを頭の中で整理する

この「短時間の記憶」と「情報の同時処理」の両方が必要になります。

ASDやADHDの特性がある方は、このワーキングメモリの働きが他の人より少し弱かったり、注意が散りやすかったりするため、以下のようなつまずきが起きやすいと言われます。

  • 話を聞いてすぐ理解しても、数分後には抜け落ちてしまう
  • 作業が中断すると、何をしていたか思い出せない
  • 一度に複数の指示を受けると混乱してしまう
  • メモを取る前に話が先に進んでしまう
  • 順序立てて進めることが苦手で、抜け漏れが生じる

こうした特性は“能力の問題”ではなく、脳の情報処理の癖によるものです。

職場で起こりやすい「環境障害」とは

ワーキングメモリの苦手さは、環境や仕事の進め方との相性によって困りごとが大きくなってしまいます。これを環境障害と呼びます。つまり、「特性 × 環境」の組み合わせによって困難さが強まるということです。ここでは、ASD・ADHD傾向の方に起こりやすい職場の環境障害を紹介します。


1. 指示が口頭で、かつ一度に複数与えられる

「まずAを片付けて、それが終わったらBの資料を……あ、そうだ、その前にCさんへの確認もお願いね」

このような口頭での長い指示はワーキングメモリに大きな負荷をかけます。
最初の指示が頭から抜けてしまい、何度も確認に行くことになり、「覚えていない=不注意」と誤解されがちです。


2. デスク周りが騒がしい、視覚刺激が多い職場

ADHD特性のある方は注意が外に向きやすく、ASD特性のある方は周囲の刺激に敏感なことがあります。
そのため、

  • 周囲の声
  • 電話の音
  • 人の往来
  • モニターの視覚情報

などが重なると、「覚えておくだけで精一杯」になり、作業効率が落ちることがあります。


3. マルチタスク前提の仕事

問い合わせ対応をしながら書類作成をし、その合間に別のスタッフに呼ばれる……
こうした同時並行の業務は、ワーキングメモリに大きな負担がかかります。

作業が中断されるたびに
「今何をしていたっけ?」
と立て直しが必要になり、そのたびに消耗してしまいます。


4. 作業の優先順位が曖昧な環境

ASD特性のある方は、予測がつきにくい状況にストレスを感じやすく、ADHD特性のある方は優先順位を曖昧なまま並行処理するのが苦手です。

そのため、

  • AとBのどちらを先にやるべきか分からない
  • 締め切りが曖昧で、後回しになってしまう
  • 気づけば目の前の作業ばかりに集中してしまう

といった混乱が起きやすくなります。


5. 暗黙の了解が多い職場

「この業務は状況を見て判断して」「いつものパターンでお願いね」
といった環境は、ワーキングメモリに負担をかけるだけでなく、ASD特性の「明確さを好む傾向」とも相性が悪い場面です。

曖昧な情報が多いと、覚えておく情報量が増え、漏れや誤解が生じやすくなります。

ワーキングメモリは「努力不足」ではなく“特性”である

ワーキングメモリの困りごとは、本人の意思ではコントロールできません。
「気をつけて」「忘れないようにして」という声がけでは改善が難しく、誤解や自己否定につながることもあります。大切なのは、
ワーキングメモリは生まれつきの脳の特性であり、“環境との相性次第で大きく働きが変わる”
という理解です。

だからこそ、自分がどの場面でつまずきやすいのかを理解することが、働きやすさの第一歩になります。

今回は、ASD・ADHDにみられるワーキングメモリの特性と、それが職場で引き起こす“環境障害”について紹介しました。
こちらのブログではここから一歩進み、

  • どう自己理解につなげるか
  • どんな工夫があれば働きやすくなるのか
  • 自分に合った環境調整の考え方

について、より具体的に解説していきます。

自分の特性を知ることは、「働きにくさ」を「働きやすさ」に変える大きなヒントになります。
ぜひ解説もご覧ください。

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