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海外の発達障害支援|3か国と日本を比較

第1部|海外の発達障害支援は、日本と何が違う?

海外の発達障害支援について、日本との違いが気になったことはありませんか。

日本には、さまざまな支援があります。療育や特別支援教育、障害福祉サービスなどです。就労移行支援や、職場での合理的配慮もあります。

一方、海外にも国ごとに異なる制度があります。

「海外の方が発達障害への理解が進んでいる」

「海外では発達障害のある人が働きやすい」

このような話を耳にすることもあります。

しかし、国によって教育や雇用の仕組みは異なります。社会保障制度にも違いがあります。

そのため、「海外は進んでいる、日本は遅れている」と単純には比較できません。

一方で、海外の発達障害支援を知ることには意味があります。日本でも参考にできる考え方が見えてくるからです。

今回は、アメリカ・イギリス・オーストラリアを取り上げます。教育・就労・生活の支援から、日本との違いや共通点を考えていきます。

海外の発達障害支援で注目したい「環境」

海外の制度を見るとき、注目したい視点があります。

それは、本人だけでなく、本人を取り巻く環境にも目を向けることです。

例えば、周囲の音が多いと集中しにくい人がいるとします。

本人に「もっと集中しましょう」と求める方法もあります。しかし、それだけが対処方法ではありません。

比較的静かな場所へ席を移すことも考えられます。また、集中する時間と休憩時間を分ける方法もあります。

指示の出し方を変える方法もあります。一度に多くの内容を伝えず、一つずつ確認する方法です。

本人と環境の両方から考える

口頭で複数の指示を受けると、混乱しやすい人もいます。

その場合、本人がメモを取ることは一つの工夫です。

さらに、指示を文字でも確認できるようにすると、取り組みやすくなる場合があります。

つまり、

「本人が環境に合わせる」だけではありません。

「本人が力を発揮しやすいように、環境も調整する」

という考え方です。

これは海外だけの考え方ではありません。日本でも合理的配慮などを通じて広がっています。

海外の発達障害支援は診断名だけで決めない

発達障害と一言でいっても、困りごとは一人ひとり違います。

例えば、ADHDのある二人がいたとします。

一人は予定管理に困っているかもしれません。もう一人は、周囲の刺激で集中しにくいかもしれません。

自閉スペクトラム症のある方でも同じです。

予定変更に強い負担を感じる人もいます。一方で、曖昧な指示の理解に難しさを感じる人もいます。

そのため、

「ADHDだから、この支援」

「自閉スペクトラム症だから、この配慮」

と診断名だけで決めることはできません。

「どんな場面で困るか」を具体的に見る

大切なのは、実際の生活場面を見ることです。

「どのような場面で困っているのか」

「どんな方法なら取り組みやすいのか」

「どのような条件では力を発揮しにくいのか」

このように具体的に整理します。

アメリカの教育では、IEPという仕組みがあります。

IEPはIndividualized Education Programの略です。障害のある子どもの教育について、個別の目標や必要な支援などを定めます。

米国教育省「Individualized Education Program」

ここでも重要なのは診断名だけではありません。本人の教育上のニーズを具体的に確認します。

こうした仕組みからも、海外の発達障害支援では個別性が重要だと分かります。

「苦手をなくす」だけが支援ではない

発達障害への支援というと、苦手を練習するイメージがあるかもしれません。

もちろん、新しい方法を身につけることも大切です。

しかし、すべての苦手を克服する必要はありません。

予定管理が苦手なら、スマートフォンを使えます。スケジュール表を利用する方法もあります。

口頭指示を覚えにくければ、文字やチェックリストを活用できます。

疲労に気付きにくい場合もあります。その場合は、決まった時間に状態を確認する方法があります。

つまり、苦手があっても生活や仕事を続けられる方法を探すことも支援です。


第2部|海外の発達障害支援と3か国の取り組み

海外の発達障害支援は、国によって仕組みが異なります。

ここからは3か国を具体的に見ていきます。

アメリカ|教育で個別の支援を考える

アメリカには、障害のある子どもの教育を保障するIDEAがあります。

その中で知られているのが、先ほど紹介したIEPです。

IEPでは、子どもの現在の状況を確認します。その上で、教育上のニーズや個別の目標を整理します。

必要な特別教育や関連サービスなども検討します。

例えばADHDのある子どもでは、学びやすくする工夫が考えられます。

課題を分かりやすくする。

休憩を取り入れる。

気が散りにくい環境を作る。

肯定的なフィードバックを行う。

こうした方法があります。

つまり、本人に「もっと集中して」と求めるだけではありません。

学習しやすい方法や環境を考えることも支援になります。

アメリカ|働く場面でも合理的配慮がある

支援は学校だけではありません。

アメリカではADAにより、一定の要件を満たす障害のある人への合理的配慮が定められています。

合理的配慮では、仕事を行うために必要な変更や調整などを検討します。

ただし、診断名だけで内容が決まるわけではありません。

本人が仕事のどこで困っているのか。

何を調整すると働きやすくなるのか。

こうした具体的な検討が必要です。

米国雇用機会均等委員会「Reasonable Accommodation」

海外の発達障害支援②|イギリス

イギリスでも職場環境の調整が行われています。

Equality Act 2010では、障害のある労働者が不利にならないよう、「reasonable adjustments」が求められています。

例えば、勤務時間を変更する方法があります。働く場所や必要な設備を調整する場合もあります。

英国政府「Reasonable adjustments for workers」

Access to Workとは?

イギリスには「Access to Work」という制度もあります。

障害や健康状態のある人が働くために、必要な支援を受ける仕組みです。

条件に応じて、専門的な機器などが対象になる場合があります。支援者や通勤に関する支援が対象になる場合もあります。

対象となり得る状態には、自閉スペクトラム症やADHDも含まれています。

英国政府「Access to Work」

ここでも、就職することだけが目的ではありません。

実際に働く場面で何が必要なのかを考えることが重要です。



海外の発達障害支援③|オーストラリア

オーストラリアにはNDISがあります。

正式名称はNational Disability Insurance Schemeです。

NDISでは、一定の要件を満たす人について支援を検討します。その際、本人の目標や必要性などを踏まえます。

支援内容は一律ではありません。

日常生活に支援が必要な人もいます。社会参加や能力の向上が目標になる人もいます。

就労に関する支援が必要な場合もあります。

オーストラリアNDIS公式サイト

ここで注目したいのは、本人が望む生活です。

「何ができないのか」だけを見るのではありません。

「どんな生活を送りたいのか」

「そのために何が必要なのか」

という視点から考えます。

オーストラリアの制度も変化している

海外の制度も完成形ではありません。

オーストラリアでは、子どもの発達支援について新しい取り組みが進められています。

その一つが「Thriving Kids」です。

そのため、「海外には完成された制度がある」と考えるのは適切ではありません。

海外でも制度を見直しています。そして、必要な支援をどう届けるかが検討されています。


第3部|海外の発達障害支援と日本の違い

ここまで海外の発達障害支援を見てきました。

では、日本とは何が違うのでしょうか。

日本にもさまざまな支援があります。

特別支援教育があります。発達障害者支援センターや障害福祉サービスもあります。

さらに、就労移行支援やジョブコーチなどもあります。

そのため、「海外には支援があり、日本にはない」ということではありません。

教育|本人が学びやすい方法を考える

発達障害のある子どもでは、学ぶ方法が合わない場合があります。

例えば、先生の説明を聞きながら板書を写すことが苦手な場合です。

そのとき、「もっと集中しましょう」と伝えるだけでは十分ではないかもしれません。

資料を事前に渡す。

指示を短く区切る。

文字や図でも説明する。

課題を小さく分ける。

このような工夫も考えられます。

日本でも、文部科学省は特別支援教育を進めています。そこでは、一人ひとりの教育的ニーズを把握することが重視されています。

文部科学省「特別支援教育」

海外の制度をそのまま導入する必要はない

アメリカにIEPがあるから、日本でも同じ制度を作ればよいわけではありません。

国によって教育制度が違うからです。

大切なのは制度名ではありません。

本人が学びやすい方法を考える視点をどう活かすかです。

仕事|本人の工夫と職場の調整

仕事でも同じことがいえます。

口頭で複数の指示を受けると、混乱しやすい人がいるとします。

本人がメモを取る方法があります。

一方、職場側が重要な指示を文字でも伝える方法もあります。

周囲の音で集中しにくい場合もあります。そのときは、座席などを調整できるか検討します。

日本でも合理的配慮の提供は重要です。

内閣府「合理的配慮の提供」

「本人か会社か」の二択にしない

本人自身が自分の特徴を理解する。

自分でできる工夫を増やす。

そして、必要な部分は職場と相談する。

この両方を組み合わせることが重要です。

これは海外の発達障害支援からも見えてくる考え方です。



地域生活|支援を使うことも自立の一つ

「自立」という言葉があります。

しかし、自立は「何でも一人でできること」だけを意味するものではありません。

スマートフォンで予定を管理する。

分からない手続きは相談する。

便利な道具やサービスを利用する。

必要なときには支援者へ相談する。

このような方法を使いながら生活することもできます。

つまり、支援を使わないことだけが自立ではありません。

必要な支援を選び、自分の生活を維持することも大切です。

日本にある社会資源を組み合わせる

日本にも地域生活を支える社会資源があります。

相談支援や障害福祉サービスがあります。発達障害者支援センターや医療機関などもあります。

大切なのは、本人の生活にどう組み合わせるかです。


第4部|海外の発達障害支援から日本で活かせること

ここまで、海外の発達障害支援と日本の違いを見てきました。

海外の制度をそのまま日本へ取り入れる必要はありません。

しかし、参考にできる考え方があります。

その一つが、「できない」で終わらず、「どうすればできるか」を考えることです。

「できる条件」を探してみる

例えば、仕事でミスを繰り返している人がいるとします。

「注意力がない」と考えるだけでは、具体的な対策につながりません。

そこで、実際の状況を確認します。

複数の指示で混乱しているのかもしれません。

口頭指示の一部を忘れている可能性もあります。

周囲の音が影響している場合もあります。

疲れてくると確認が減る人もいます。

原因が具体的になれば、対処方法も考えやすくなります。

指示を一つずつ確認する。

チェックリストを使う。

優先順位を明確にする。

必要なら職場と相談する。

つまり、「どんな条件ならできるのか」まで考えることが大切です。

自己理解が合理的配慮につながる

環境を変えるだけですべてが解決するわけではありません。

本人自身が自分の特徴を理解することも重要です。

「口頭だけでは覚えにくい」

「予定変更が続くと焦りやすい」

「人の多い場所では集中しにくい」

こうした傾向が分かれば、早めに対処できます。

さらに、自分の状態を相手へ伝えやすくなります。

「重要な内容は文字でも確認したいです」

「どちらを先にするか確認してもいいですか」

このように具体的に相談できます。

支援は一度決めて終わりではない

必要な支援は生活環境によって変わります。

学生から社会人になる。

一人暮らしを始める。

仕事内容や勤務時間が変わる。

こうした変化によって、新しい困りごとが出る場合があります。

そのため、

支援を考える
→ 試してみる
→ 振り返る
→ 必要に応じて調整する

という流れが大切です。

将来の生活も考える

家族が支援を続けられるとは限りません。

そのため、将来を見据えて相談先とのつながりを作ることも重要です。

家族だけですべてを抱える必要はありません。

地域の相談機関や福祉サービス、医療機関などとつながる方法があります。

ディーキャリアびわこ第一オフィスでできること

ディーキャリアびわこ第一オフィスでは、発達障害や精神障害などのある方を対象に支援をおこなっています。

目指すのは、就職とその後の安定した就労です。

例えば、

「コミュニケーションが苦手」

「集中力が続かない」

という言葉だけで終わらせません。

どんな場面で難しくなるのか。

どんな条件なら取り組みやすいのか。

本人自身でできる工夫は何か。

職場へ相談した方がよいことは何か。

こうした内容を具体的に整理していきます。

また、生活リズムやストレスへの対処も大切です。コミュニケーションや自己理解についても考えていきます。

必要に応じて、関係機関との連携も行います。

ディーキャリアびわこ第一オフィス

まとめ|海外の発達障害支援から考える「その人に合った支援」

今回は、アメリカ・イギリス・オーストラリアを中心に、海外の発達障害支援を紹介しました。

国によって制度は異なります。

そのため、「海外の方が進んでいる」と単純に比較することはできません。

しかし、参考にできる考え方があります。

診断名だけで支援を決めない。

本人が困っている場面を具体的に見る。

本人の努力だけに頼らない。

環境側で調整できることも考える。

そして、生活の変化に合わせて支援を見直す。

例えば、「集中できない人」ではなく、

「静かな環境なら集中しやすい人」

と考えることができます。

また、「口頭指示を覚えられない人」ではなく、

「文字でも確認できれば正確に取り組みやすい人」

と捉えることもできます。

このように、苦手だけを見る必要はありません。

「どのような条件なら、その人が力を発揮できるのか」

を探していくことが大切です。

海外と日本では制度が違います。それでも、この考え方は教育・生活・就労のどの場面でも大切な視点といえるでしょう。


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