ADHDと仕事の失敗|自信を取り戻すまで
「また忘れてしまった」「何度確認してもミスが出る」。ADHDの特性に関連する仕事の困りごとは、周囲に伝わりにくいことがあります。今回は、失敗が続いて自信をなくした一人の人が、相談を通じて働き方を見直していく物語をご紹介します。

ADHDの特性と仕事の悩み|気をつけているのにミスが続く
20代後半のAさんは、事務職として働いていました。仕事に手を抜いていたわけではありません。それでも、電話に出たあと元の作業を忘れたり、頼まれたことを後回しにして抜けてしまったり。
メモを取ろうとしても、急な依頼が続くと追いつきません。確認に時間をかけすぎて、締め切りが迫ることもありました。
「前にも伝えたよね」と言われるたび、Aさんは落ち込みました。「次こそは」と頑張っても、同じことが起きる。やがて「自分は働くことに向いていないのかも」と考えるようになりました。
仕事の困りごとを、うまく説明できないとき
退職後、Aさんは再就職を考えました。しかし、求人を見ると不安が先に立ちます。そこで、就労移行支援事業所のディーキャリアびわこ第一オフィスに相談してみることにしました。
最初の面談では、話がまとまりません。「ミスが多くて……でも、何が原因なのか自分でも分からなくて」。言葉に詰まったAさんに、支援員はすぐ答えを求めませんでした。
「一つずつ振り返ってみませんか。どんな場面で困りましたか?」。さらに「逆に、落ち着いてできた仕事はありましたか?」と尋ねました。
Aさんは、手順が決まった作業なら集中しやすかったことを思い出しました。できなかったことだけでなく、できた場面も一緒に考える。 そのやり取りが、少し気持ちを軽くしました。

ADHDの特性を知り、自分に合う工夫を試す
訓練では、作業の進め方を振り返りました。Aさんは、一つの仕事に集中すると正確に進められる一方、途中で別の指示が入ると抜けが増える傾向に気づきます。
そこで、支援員と相談しながら、いくつかの方法を試しました。
- 口頭の指示は短くメモし、その場で内容を確認する
- 作業を始める前に、優先順位を一つずつ整理する
- チェック項目を増やしすぎず、見返せる場所に置く
- 急な依頼が重なったら、順番を確認してから着手する
もちろん、すぐに全部できたわけではありません。メモを取っても見返し忘れた日があります。チェックリストを複雑にしすぎたこともありました。
そんなときも「できなかった」で終わらせず、「どこまでできたか」「次は何を変えるか」を一緒に整理しました。ADHDの特性そのものを無理に消そうとするのではなく、仕事の進め方と環境を調整する練習です。
小さな成功体験が「相談してもいい」に変わった
ある日の訓練で、Aさんは二つの作業を頼まれました。以前なら、焦って両方を同時に進めていた場面です。
その日は一度手を止めて、「先にこちらを終わらせてもいいですか?」と確認しました。順番がはっきりすると、落ち着いて作業を進められました。
「今日は途中で分からなくならなかったです」。Aさんは少し笑いました。大きな成果ではないかもしれません。でも、自分で工夫し、必要なことを聞けた経験は、確かな一歩でした。
ADHDと就職活動|苦手だけで仕事を選ばない
就職活動では、Aさんが取り組みやすい仕事の条件も整理しました。手順が分かりやすいこと。優先順位を確認できること。急な割り込みが多すぎないこと。
面接では、苦手なことを隠すのではなく、対処方法と一緒に伝える練習をしました。「複数の指示が重なると抜けが出やすいため、メモを取り、優先順位を確認して進めています」
その後、Aさんは条件を確かめながら応募を進め、就職につながりました。新しい職場でミスがゼロになったわけではありません。それでも、困ったときに相談し、やり方を見直せるようになったことが、以前との違いでした。

ADHDの悩みは、人によって違う
ADHDといっても、困りごとは一人ひとり異なります。忘れ物が多い人、時間の見通しが立てにくい人、集中の切り替えが難しい人。仕事内容や職場環境によっても、困り方は変わります。
だからこそ、「ADHDだからこの仕事」と決めつけるのではなく、本人の経験や希望を丁寧に整理することが大切です。特性について知りたい方は、政府広報オンラインや、国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターなどの公的情報も参考になります。
ディーキャリアびわこ第一オフィスで、まずは話してみませんか
「何に困っているのか、自分でも分からない」「また仕事で失敗するのが怖い」。そんな気持ちを、最初から上手に説明する必要はありません。
ディーキャリアびわこ第一オフィスでは、これまでの経験や今の不安を一緒に整理しながら、自分に合う働き方を考えていきます。苦手なことだけでなく、得意なことや取り組みやすい環境にも目を向けます。
相談すること自体が、最初の一歩です。 話がまとまらなくても構いません。まずは、今感じていることから聞かせてください。
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