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食事でADHD特性対策!「集中力」を高める食べ物は?

ADHDの苦手あるある「集中しづらい・続かない」を「食べ物」で対策。カフェインの摂り過ぎは要注意!おすすめの栄養素を紹介。

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「集中力が続かない」「1つのことに専念できず、つい気が散ってしまう」 ADHDの特性がある筆者は、集中しづらさという傾向があります。何か気になることがあると今やっていた作業から集中がそれてしまったり、優先順位が高いやるべきことに専念しなければいけないのに、つい興味のある他のことについて考えて手が止まってしまったり、ADHDの衝動性が行動にあらわれてしまいがちです。そんな傾向への対策として、今回は「食事」という観点からできることをお伝えしていきます。 皆さんの「生きづらさ・働きづらさ」への対処法のヒントとして、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] なぜADHDがあると集中力が続かないのか ADHDの抱える「衝動性の強さ」 ADHDのある方は、判断や抑制を司る脳内の機能が低下し、行動や思考のブレーキが効きにくくなり、すぐに行動に移してしまいがちです。この「衝動性の強さ」が、集中しづらさにつながっています。 ADHDの抱える「ワーキングメモリーの弱み」 また、情報を脳内に一時的に置いておく機能「ワーキングメモリ―」の働きが弱い傾向が、ADHDのある方には顕著です。その傾向から、1つの作業に集中しようにも、作業に必要な情報の整理ができないこともよくあり、これもまた集中しづらさにつながっています。 このように、ADHDのよくある2つの傾向「衝動性の強さ」「ワーキングメモリ―の弱み」が主な原因となり、集中力が続かない、集中しづらいという結果に結びつきがちです。 ADHDのある方が集中できない理由やその対策については、下記の記事に詳しく書いてありますので、興味ある方は参考にしていただければと思います。 集中しづらさを「食事」で対策 集中力不足によくやりがちな対策 そもそも、ADHD特性の有無関係なく、誰にでも「集中しづらい」ときはあるものです。たとえば睡眠不足だったり、過労で頭がしっかり働かなかったりといった経験は誰でもあるでしょう。そんな集中力が途切れたときには、多くの人はエナジードリンクやコーヒーなどで「カフェイン」を摂り、眠気覚ましや脳を覚醒させて、集中力を発揮しようとするものです。 たしかに、カフェインには大脳を興奮させる作用があり、眠気が覚めて気分が高揚したような感覚を得ることができます。ただそれは、いわば「元気の前借り」であって、長期的に安定して集中力を発揮することから逆に遠ざかってしまいます。過剰に摂取すると、脳を中心とした中枢神経系が刺激されることによるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等の健康被害があるとされ、厚生労働省は注意喚起をしています。 参考:食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~ そこで、長く安定して「集中できる自分」になれるための3つの栄養素や成分、それらを多く含む食べ物をご紹介します。 脳の唯一のエネルギー源「ブドウ糖」 まずは、脳を活性化させて集中力や記憶力を高める、脳の唯一のエネルギー源「ブドウ糖」を摂ることが大事です。ダイエットのために糖質制限をするのはよく聞きますが、あまり過剰にやり過ぎると適切な判断ができなくなったり注意力が低下したりします。適切なタイミングで、しっかりブドウ糖を摂ることは、集中力を高める上でも大切です。 ブドウ糖を多く含む食べ物としては、パンなどの穀類、いも、果物などが挙げられます。特に果物はブドウ糖の含有率が高く、集中力対策には効果的です。また、砂糖などの甘味料も大事な脳のエネルギー源となってくれます。 参考:ブドウ糖を含む食べ物とは?ブドウ糖のおもな働きやおすすめレシピを紹介 筆者も、会社の仕事帰りなどで疲労感がたまっているときに、そうとは知らずブドウ糖を補給していた経験があります。帰宅途中の乗換駅にカフェがあり、そこで冷たくて甘いスムージーがとても欲しくなり、よく立ち寄っては飲んでいました。今考えると、体がブドウ糖を欲していたのでしょう。 ただし、一度に大量のブドウ糖を摂取すると、血糖値が急激に上がることがあります。急激に血糖値が上昇すると、体内でインスリンが過剰に分泌され、体に脂肪を溜め込みやすくなり、肥満のリスクが高くなってしまいます。同時に、眠くなったり、気持ちがイライラする原因ともなります。 そこで、血糖値の急激な情報を抑えてくれる食物繊維を多く含む食べ物を一緒に摂ると良いでしょう。幸いなことに、いもや柑橘系の果物など、ブドウ糖と食物繊維の両方とも多く含む食物もあります。他に、野菜や豆類、きのこや海藻などは、食物繊維を多く含むのでお勧めです。 脳のエネルギー補給を補助する「ビタミンB1」 ブドウ糖を体内に入れただけでは、直接脳の活性化にはつながりません。体内に取り込まれたブドウ糖をエネルギーに変えることが必要になります。ブドウ糖をエネルギーに変える働きやそのための神経を正常に機能させるのが「ビタミンB1」です。 ビタミンB1が不足すると、ブドウ糖の分解がうまく行なわれなくなり、脳へのエネルギーの供給がうまくいかず、集中するどころの話ではなくなってしまいます。ブドウ糖を摂るのと同時に、ぜひビタミンB1も一緒に摂るようにすることを心がけましょう。 ビタミンB1を多く含む食物は、肉類(豚肉、レバー)、魚類(ウナギ、カツオ)、豆類などがあります。穀類にも含まれますが、多く含まれるのは玄米などであり、パンや精白米などはビタミンB1は多くはありません。また、お酒をよく飲む方は、アルコールの分解にビタミンB1が使われてしまうため、せっかく摂取したビタミンB1が無駄に消費されてしまうことに注意が必要です。 やる気や覚醒を司る神経伝達物質を作る「チロシン」 また、「やる気」を起こさせる、持続させるという点では、「チロシン」という成分が有効です。チロシンは、ドーパミンやアドレナリンの原料です。ドーパミンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、やる気の向上や幸福感のアップをもたらしてくれます。アドレナリンは、危機を察知したときなどに分泌されるホルモンであり、集中力を上げて、自分の置かれた状況に対して迅速に決断することを助けてくれます。 チロシンを多く含む食物の代表はタケノコです。他にも、かつお節やアーモンド、ピーナッツ、牛乳や肉類にも豊富に含まれています。チロシンはトリプトファンという物質と一緒に摂取するとより効率的に脳に届けられます。トリプトファンは大豆や牛乳、チーズやヨーグルトなどに多く含まれています。 なお、炭水化物を多く含む食物とチロシンを一緒に摂ると効果が低くなってしまうので、ご注意ください。 食事以外での集中しづらさ対策 今までは、集中力を上げる食事についてお伝えしてきました。私たちの体は、食べたものによってできているといっても過言ではありません。何をどう食べるか気をつけると、きっと効果が現れることでしょう。 そういった食事面での対策をしつつ、さらに効果を上げるための対策を挙げてみます。 定期的な気分転換 無意識的に行なっている方もいるかもしれませんが、あらためて「定期的な気分転換」の重要性をお伝えします。まず、集中しづらさという元来の傾向をある程度受け入れることが、無理なく自然に作業を継続できるよい対策につながります。 そのためにも、一気に長時間作業を続けるのではなく、短時間に区切り、タイミングよく休憩や気分転換を挟むことをお勧めします。 気分転換の事例としては、オフィスで業務を行なっている場合、トイレに行ったり、コーヒーブレイクをしたりすることが挙げられます。筆者は、常にコーヒーの入ったコップをデスクに置き、飲み終わったタイミングでまたコーヒーを入れるため給湯室へ行っていました。オフィスから出られるなら、昼休みなどに軽い運動をしたり、仮眠をとるのも有効です。こうした行動を取って気持ちをリフレッシュさせることで、集中力が高まります。 また、定期的な区切りをつけられるようにするために、業務の作業内容を小分けにするなど仕事を進める上での工夫も重要です。たとえば、「資料を作る」ではなく、「資料の項目を洗い出す」「項目ごとに簡単な内容を書く」「本文を書く」といった具合です。小分けにすることで、席を立つタイミングをより多く作ることができ、ずっと机にかじりつくような状況を避けることができます。 さらに、集中力を高めるには、「集中すべき対象以外に注意をいかせない」工夫も大事です。たとえば、今日やるべきことを付箋に書きだして目の前に貼っておく、机の上の物はできるだけなくす、仕掛かり中の仕事タスクに関係のない書類はシュレッダーするかスキャンしてデータで保存する、スマホの通知やパソコンのメールの通知などは切っておくといったことで注意散漫になることを避け、より集中できる環境を作ることができます。 服薬 集中しづらさにはADHD特有の「衝動性」があることはすでにご説明しました。服薬をすることで、この衝動性を軽減できる場合があります。ストラテラを服用することで衝動性が抑えられているという体験談を過去の記事でご紹介しております。 集中しづらさ対策は人それぞれ 今回の記事では、食事面での対策を中心に、集中力を上げる、集中しづらさという傾向を抑える方法をお伝えしてきました。ただ、そもそもADHDと言ってもその症状や傾向は人によって違います。集中力が続かない原因も人それぞれだと考えるのが適切でしょう。 発達障害の特性がある方は、睡眠障害も併発しやすく、その結果集中しづらさにつながっている場合もあります。「過集中」が原因で疲労が溜まってしまったり、職場への過剰適応のせいで疲れやすくなったり、環境と特性のミスマッチによって集中できなくなることもあります。 そういった困りごとや特性などを総合的に判断し、原因にあわせた対策が必要になります。食事での工夫なども含め、専門的な知見を持った人の協力を得て、働くうえで自分にあった対処法を見つけて実践していくことが大切です。 就労移行支援事業所ディーキャリアでは、働くことで悩みを抱えている発達障害のある方の支援をおこなっています。 就労移行支援事業所とは、障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう障害福祉サービスの一つです。(厚⽣労働省の許認可事業) 就職とは人生の目的を実現するための通過点です。自分の「なりたい」姿を見つけ、障害特性への対策と自分の能力を活かす「できる」ことを学び、社会人として長く働くために「やるべき」ことを身に付ける。 「なりたい」「できる」「やるべき」の 3 つが重なりあうところに仕事の「やりがい」が生まれると、私たちは考えています。 ディーキャリアは、就労へ向けて以下4点においてサービスを提供しています。 「就労準備性」の向上就労するうえで必要な心身の健康管理(生活リズムの安定、通院・服薬等)、ビジネスマナーの習得、コミュニケーションスキル・実務スキルの習得等をおこないます。自分の障害特性への対処法の習得障害理解を深め、自己対処法の習得、必要な合理的配慮の洗い出しをおこないます。「自分らしい"働き方"」の探求業界職種はもちろん、一人ひとりに合った「働き方(障害者雇用or一般雇用、給与、職場環境、勤務時間等)」をスタッフに相談しながら決めることができます。就職サポート応募書類の添削や、面接練習、キャリア相談などを通して、就職に至るまでの「就活」をサポートします。具体的には以下をご参照ください。 具体的には以下をご参照ください。 ご相談は無料です。フリーダイヤル、または、24 時間受付のお問い合わせフォームにて、お気軽にお問い合わせください(ご本人様からだけでなく、当事者のご家族の方や、支援をおこなっている方からのご相談も受け付けております)。 お電話(0120-802-146)はこちら▶ お問い合わせフォームはこちら▶ また、全国各地のディーキャリアでは、無料の相談会や体験会も実施しています。 全国オフィス一覧はこちら▶ 就労移行支援事業所ディーキャリアは、「やりがい」を感じながら活き活きと働き、豊かな人生を目指すあなたを全力でサポートします。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 記事監修:北川 庄治(デコボコベース株式会社 プログラム開発責任者) 東京大学大学院教育学研究科 博士課程単位取得満期退学。通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導講師を経て現職。
ADHDにいつ気付いた?大人になるまで分からないことも

社会人になってからADHDと診断された筆者が、障害と向き合いながら「生きづらさ」を軽減させたエピソードについて紹介します。

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「頑張っているんだけど、なぜか仕事がうまくいかない」「学生時代は気付かなかったけど、社会人になってミスや失敗が目立つようになった」 筆者は発達障害のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を20代後半に受けました。今になって振り返ると、幼少期や学生時代にも、ADHDの特性が出ていたと思います。しかし、そのときは「発達障害」という言葉自体を知らなかったこともあり、ただ単に「なぜだか分からないが、とにかくうまくいかない」という思いを抱えていました。 その後、発達障害の診断を受け、自分の障害特性を理解し受け入れたことで、具体的な対策を打って「生きづらさ」を軽くしていけたという実感があります。そんな「発達障害の気付き」「障害特性の受け容れ」「特性への対策」について、経験談を交えながらお伝えしていこうと思います。 発達障害による「生きづらさ・働きづらさ」を感じている皆さまに、この記事がお役に立つことを願っています。 発達障害の診断を受けるべきか悩んでいる方は、以下のコラムもあわせてお読みください。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] ADHDとは まず、ADHD(注意欠如・多動性障害)について、その脳の特性とその特性による影響について簡単にまとめたものをお伝えします。 脳の特性 判断や抑制をつかさどる脳の部位の機能低下・行動や思考のブレーキが効きにくい。・思いついたことをよく考えず衝動に任せて言ってしまったり行動したりしてしまう。ワーキングメモリーの機能低下・臨機応変な対応が難しい。・不注意が起こりやすい。 特性による困りごとの例 ケアレスミスや忘れ物・無くし物が多い落ち着きがないと言われることがある人の話を聞き続けることや同じ資料を読み続けることが苦手予定や約束を忘れてしまうことがある遅刻を繰り返してしまうことがある部屋の片付けや物を探すことが苦手思ったことをそのまま口に出してしまうことがある衝動買いや計画性のない行動をしてしまうことがある仕事中や授業中など大事な場面で寝てしまうことがある計画通りに物事を進めることや、締切を守ることが苦手である このように、脳の特定の機能が低下することで日常生活や仕事上で多くの困りごとが発生することがあります。もっと詳細を知りたい方は、大人の発達障害とは|注意欠如・多動性障害(ADHD)をご覧ください。 ADHDの気付き 「自分がADHDである」という気付きは、幼少期に親が気付いて診断をしてもらったり、逆に大人になって困りごとに直面してはじめて気付いたりと、人によって千差万別です。それぞれの時期別に、よくある気付きのパターンを、筆者の経験談も交えてご紹介します。 幼少期 まだ成長段階であることが多い幼少期は、「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「衝動的に行動する」といったことが、先天的な発達障害の症状によるものなのか、それとも成長の一過程だからなのかが判別つかないことがあります。 そんな中でも、以下のような傾向が見られ、それにより保護者の方などから注意を受けることで、本人や周囲が気が付くことが多いと考えられます。 不注意によるもの・ 話を聞き続けられない・ 遊びや活動に集中できない・ 忘れ物や失くし物が多い多動性によるもの・じっとしていられない・ 落ち着きがなく、絶えず動き回る・ 静かな活動が苦手衝動性によるもの・ 順番を待てない・ 思い付きで行動をする・ お友達に手が出てしまう・ 感情の起伏が激しい 今思い返してみると、ADHDの特性や、さらには同じく発達障害の一類型であるASD(自閉スペクトラム障害)の特性が影響していると思われる困りごとがよく発生していました。※ASDの特性について詳しく知りたい方は、大人の発達障害とは|自閉症スペクトラム障害(ASD)をご覧ください。 幼稚園の運動会でリレーでのことです。チームに分かれて1人1周ずつ走っていました。第3コーナーにさしかかる直前に先生から「内側を走って!」と言われ、向きをグイッと変えてコースを外れてゴールへほぼ一直線に向かってしまいました。もちろんルール違反で失格です。先生の言う「内側」は、「コースの中で、他の選手よりもなるべく内側」という意味だったのですが、そういった理解をせず独自の解釈をしてしまったのです。「なんでそうするの!?」と先生に叱られながら、心の中では、内側と言われたから内側を走っただけなのにと不満を抱いたことを覚えています。 後年筆者が受けた診断はADHDですが、発達障害は併存することがよくあります。このリレーでの出来事は、ASDによく見られる「言葉の意図が読めない・文字通りに言葉を受け取る」という特性の影響も少なからずあったのではないかと考えています。 学生時代 学生時代は、幼少期より人格形成がされつつあり社会性も求められるので、本人もその特性に比較的気が付きやすくなります。 そのような状況で、以下のような傾向があり、周囲との差を認識することで、自身のADHD特性に気が付くことがあります。 学習の困難・集中力が持続しない・授業中にぼんやりしている・宿題や課題を忘れることが多い行動管理の困難・計画的に勉強や課題をこなすのが難しい・物忘れや失くし物が多い行動抑制の困難・教室内で落ち着かない、席を立ち歩く・過度に話す・ 質問が終わる前に答えたがる社会性の困難・衝動的な発言や行動が多い・危険な行動をとりやすい・友人関係がうまく築けない・いじめの対象になりやすい 筆者は、学習の困難や行動管理の困難、さらにはその社会的な困難があり、「忘れ物が多い」「宿題を忘れる」「計画的に課題をこなせない」「衝動的な行動」といった多くの困りごとに直面していました。 小学生のとき、市のイベントでキャンプにいったときがありました。そこで知り合った友人たちと、近くにある山に登りました。その山はかなり斜面が急で、山道には道に沿って綱がひいてあり、当然その綱につかまりつつ山道を歩かなければ危険なのですが、ふと「この綱から手を放してみたらどうだろう」と考え、パッと手を放してしまったのです。 それから数歩は余裕で歩けたので、調子に乗ってちょっと「ホラ大丈夫!」と速度を早めたところ、その加速が止まらなくなってしまいました。運悪くつまづいて転び、ゴロゴロ転がっていく形になりました。その先は急カーブで、そのままだと自分で曲がることができず深い谷に投げ出されてしまう状況でした。 幸い、急カーブの手前にある大きな木にぶつかって止まり鎖骨骨折で済みましたが、木がなかったら谷底へ落ちていました。まさに、衝動性による危険な行動と言えます。 ただ、幼少期も学生時代も、「発達障害」や「ADHD」という言葉自体があまり知られていなかったこともあり、そういった困りごとがあったにもかかわらず、自分自身も周囲も、特段対策を打つという考えすら思い浮かびませんでした。 社会人以後 幼少期や学生時代において、自身のADHD特性に気が付かず過ごしてきても、社会人として自立・自律して仕事や日常生活をおこなうようになってはじめて気が付くことがあります。 多くの場合は、仕事をする上での困りごとに直面することで否応なしに自身の特性を自覚せざるを得ないというパターンになります。 職務遂行の困難・プロジェクトの計画が立てられない・ケアレスミスが多い・時間管理が苦手(遅刻や納期遅れが多い)・時間配分がうまくできない・優先順位付けが苦手対人関係の困難・上司や同僚とのコミュニケーションがうまく取れない・衝動的な発言や行動でトラブルが生じる日常生活等における困難・感情の起伏が激しいことが多い・ストレスやフラストレーションを感じやすい・家事の管理や金銭管理が苦手・日常生活のルーチンを維持できない 筆者は、職務遂行の困難や時間管理の問題などにより、仕事がうまくいかないと悩むことが非常に多く、さらに、その影響で周囲との関係性が悪化してなおさら仕事がうまくいかなくなるという悪循環に陥りました。 司法書士の資格試験の勉強をしていた20代後半で就いた、ある不動産屋でのアルバイトの話です。最初は快く迎え入れてくれたものの、送付すべき書類を頻繁に間違ったり、お客様を入居候補物件へ案内するのに事前に地図をチェックせず道に迷って結局満足に案内できなかったりとミスや失敗をしていたので、次第に人間関係が悪化していきました。 あるとき、経理をしている社長夫人から、従業員全員にジュースの差し入れがありました。当然自分ももらえるものと思っていたのですが、私だけスルーされてしまいました。また、その社長夫人へ、とある物件についての報告をしたときに、とにかく「言っていることが分からない」とだけしか言われず、どこをどう直して報告すれば良いかも分からず完全に自信を失い、簡単な仕事すらうまくいかないという状況になってしまいました。 そんなこともあり、「自分がこんなにうまくいかないのは、何か理由があるのかもしれない」と思い、「仕事 できない」「仕事 ケアレスミス」といった検索ワードで調べてみたところ、はじめて発達障害やADHDという言葉を知ったのです。その後、公的機関に相談して診療所を紹介してもらい、ADHDの診断を受けました。
ADHD当事者が編み出した「片付け苦手」克服法を紹介

片付け・整理整頓が苦手なADHD当事者が、失敗体験から見出したライフハックを紹介。日常生活はもちろん、職場で活かせる特性対処のヒントに!

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「片付けをしようとしても、何から手を付ければいいか分からない」「会社のデスクの上に物が散乱していて、仕事に支障が…」 ADHDの特性のある人にとって、物を片付けて整理整頓するハードルは高いものです。「先延ばし・注意力散漫・やる気になりづらい」といった傾向は、キチンとまめに片付けをするという行動に立ちはだかる大きな壁になります。 筆者も、片付けに対して長年苦手感を抱いていました。特に職場での物の整理整頓は、仕事上のロスタイムやミス・失敗の原因にもなりかねません。そこで、まず日常生活において小さな行動をきっかけにしてなんとか人並み程度にはできるようになりました。さらに、職場では、仕事の整理をすることで結果的に物の整理ができるようになりました。 今回は、そういった日常生活上での片付けの工夫、職場での物の整理への取り組み方をお伝えします。 皆さんの日常生活での困りごとが少しでも「ラク」になるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 筆者の「片付けられない」エピソード まずは、どれだけ筆者が片付けや整理整頓が苦手だったかをお伝えいたします。 幼稚園のお泊り保育 整理整頓への苦手感でまず思い出すのは、幼稚園のお泊り保育でのことです。 親がリュックサックに服や下着、靴下やその他必要な物をビニール袋に小分けして入れてくれたはずなのに、着替えなどのタイミングでかならず「・・・はて?」と困っていたのを覚えています。どの服を着ればいいのか分からない、どれがすでに履いた下着でどれがこれから履くべき下着なのかが分からない、そんな状態でした。 同じ組の友達がチャッチャと着替えて集合場所に向かう中、自分ひとりだけ部屋にポツーンと取り残されて、リュックサックの中のものを出したり入れたりしては、「どれを着るんだろう?」と頭をひねっていました。 机の中から靴下が1足 小学生になっても自分が持っている物の整理ができず、そのせいか頻繁に忘れ物や失くし物をしていました。学校の担任と親との連絡事項を書く連絡帳には、担任からの「また忘れ物をしたようです」、そして親からの「申し訳ございません、よく言って聞かせるようにいたします」のやりとりの連続でした。しかも、連絡帳自体持って帰るのを忘れるという始末でした。 特に夏休みなどの直前は大変で、ロッカーの中や机の中などは、開けてはいけないパンドラの箱でした。ロッカーの中はとにかく大量の物が乱雑に押し込まれプレスされた状態で、取り出すことすら大変でした。また、本来教科書やノートなどしか入っていないはずの机の中ですが、なぜか奥の方から靴下が1足だけでてきたことがありました。 ずさんな来客カードキー管理 時は過ぎ、会社員として働くようになってからのことです。相変わらず整理整頓が下手でした。例えば、会社に来客があった際に必ずお渡しする貸出用のカードキーの管理など。来客があったらカードキーを貸し出し、お客様の用件が済んだら、カードキーの返却を受けて管理用の引き出しに戻し、貸出簿に返却のチェックを入れる。たったそれだけのことです。 それがうまくいかず、どのカードキーを貸し出しているのか、貸出簿と現実とがまったく合わず、行方不明になったカードキーの入室権限を止め、新たな貸出用のカードキーを頻繁に作らねばならず、非常にずさんな管理しかできていませんでした。 日常から始める「物の管理」対策 そんな私ですが、取っ掛かりとして家にある物の片付けから手をつけてみることで、片付けへの苦手感を少しずつ克服することができるようになりました。 まず声を大にして言いたいのは、「捨てることを制する者、片付けを制する」です。「整理整頓(せいり→せいとん)」と言いますが、「整頓整理(せいとん→せいり)」とは言いません。整理は「物を捨てること(不要なものを取り除く)」、整頓は「必要なものをいつでも誰でも取り出せるよう、秩序立てて配置すること」です。まず最初に「整理=捨てること」ありきなのです。 とにかく、捨てる!捨てる!捨てる!片付けの第一歩はそこからです。 とは言うものの、ADHDのある人は捨てることも苦手だったりします。そのための、筆者が実践している小さな工夫を1つだけご紹介します。まずはこれだけやってみてください。 一日一善ならぬ「一日一捨」 ADHD特性のある筆者は、色々な物に目がいってしまい集中できなくなってしまいがちです。また、ゴチャッとうずたかく積まれた物を見てやる気をなくし、すぐに先延ばしをしてしまいます。そんな筆者でも実践できたのが、 一日一捨 です。今日、目の前の1個だけ捨てる。明日もまた、目の前の1個だけ捨てる。ただそれを繰り返していくのみです。色々な物に注意がそれる前に「1個捨てる」という行動は完了します。ものの数秒、長くて十数秒です。 「じゃあ、まとまった時間をとって10個や20個捨てたほうがいいんじゃないか」と思うかもしれません。でも、1個にしておきます。中断させられたような気持ちになり、次の1個をやりたくなります。そのまま自分をじらすことで、翌日に片付けたい気持ちを持ち越すことができるのです。その繰り返しで、先延ばしすることなく、いつの間にか多くの「捨てるべき物」がなくなっているのです。 我慢できなくて一日に2個以上捨てることもあるかもしれません。ただし、原則は「一日一捨」。これだけを考えてやってみると、無理なく自然に物を整理することができます。
【発達障害と金銭管理】実際に効果があった対策を紹介

金銭管理が苦手な発達障害のある方に向け、ADHD当事者が実際に効果のあった対策を紹介します。特性別の困りごとと支援制度についても解説。

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「衝動買いが止められない」「お金がいつの間にか残り少なくなっている」「貯金がどうしてもできない」 発達障害のある方は、金銭管理に関する苦労がついてまわるといっても過言ではありません。筆者も、期限まで払うべきお金を延滞させてしまったり、計画的なお金の使い方ができず月末に翌月分の前借りをしなければならなくなったりと、お金の管理にはだいぶ手を焼いてきました。 今回の記事は、特性別のよくある困りごと、それらに対する対策、さらには相談先や支援制度の紹介をいたします。まずは自分で困りごとを把握して対策を立てることが大事です。しかし、自分だけでどうにかできない可能性もあり、相談先や支援制度も知っておくこともまた大切なこととなります。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 [toc] 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、「先天的な脳機能の障害」です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 【特性別】お金の困りごとあるある 本記事では、ASDとADHDにフォーカスして、お金の困りごとを列挙していきます。 ASD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある将来の見通しを立てることへの苦手感計画をもってお金を使うことや、クレジットカードの引き落としなどの管理が難しいこだわりの強さ興味関心があることへの執着から、強い購買意欲を抑えられなくなる他者の気持ちが汲み取りづらい相手の言うことの真偽を見抜くことが苦手で騙されやすく詐欺被害にあうことがある ADHD特有の「お金の困りごと」 特性困りごとあるある衝動的に行動してしまう「ほしい」という感情や行動の抑制ができず衝動買いしてしまう継続することへの苦手感飽きっぽい・集中力が続かない等の理由で家計簿をつけ続けられない ASDやADHDの特性をお持ちの方は、多かれ少なかれ当てはまるところがあったのではないでしょうか。このような特性由来の「困りごと」を把握することは、対策をとるうえで大事になってきます。まずは、上記の「困りごと」のうち、自分がどれによく当てはまるかを確認してみてください。
【発達障害の治療と薬】実際に服薬してみてどうだった?

発達障害の治療法には服薬と心理療法があります。服薬の体験談と効果についてインタビューしました。薬に頼らず自己対処をすることも大切です。

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「発達障害の特性を治療でどうにかしたい」 「服薬をすることでもっとスムーズに毎日を送りたい」 発達障害と診断を受けた場合、服薬や心理療法を勧められることがあると思います。そこで、発達障害の治療法にはどんなものがあるのか、そして治療薬はどのようなものがあり、どんな効果があるのかをお伝えします。特に治療薬については、体験談を織り交ぜながらご説明していきたいと思います。 皆さんが少しでも過ごしやすい社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 皆さんが少しでも安心した社会生活を送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害とは まず最初に、発達障害とはどういう障害なのかを簡単にご説明します。 「先天的」なもの 発達障害は、先天的な脳機能の障害です。「大人の発達障害」という言葉が有名になりつつあるので誤解されがちですが、親のしつけや本人の努力不足などで後天的に発達障害になる、ということはありません。 大きく分けて3つの要素がある 発達障害には、大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)の3つの要素があります。 自閉症スペクトラム障害(ASD) 対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りなどを特徴とする障害 注意欠如・多動性障害(ADHD) 不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害 限局性学習障害(SLD) 全体的な知的発達に大きな遅れはないが、読み・書き・計算などの特定の課題の習得が、他に比べて不自然に遅れる状態 発達障害と診断される人のほとんどは、ADHD傾向が強いがASDの特性もいくぶんか見られるといった、3つの要素の濃淡の組み合わせであることが多いのです。このように、3つそれぞれの間は独立・分断されていないことから、発達障害はスペクトラム(連続性がある)と言われています。 発達障害の定義や、3つの障害の詳細については、下記記事を合わせてお読みください。 発達障害の治療について 一般に、医師から病気であると診断された場合、治療を受けたり薬を処方されたりします。発達障害も同じです。成育歴や日々の行動の聞き取りや、考え方や知能等の心理検査の結果をもとに診断され、治療を受けます。発達障害の治療には、大きく分けて「心理社会的治療」と「薬物療法」の2つがあります。 心理社会的治療 心理社会的治療は、「発達障害は先天的なものであり、障害そのものを『治癒』することは困難である」という見地に立ちます。そのため、本人が自らの特性と向き合い、社会に適応していくためのスキルを身に付けることが目的となります。 心理社会的治療の代表格といえば「認知行動療法」です。自身の「認知(ものごとのとらえ方)」を観察することで、そこから生まれる「感情」「行動」を変化させて生きづらさやストレスを軽くしていく治療法です。 認知行動療法については、下記記事を合わせてお読みください。 その他にも報告・連絡・相談のロールプレイなどをする「ソーシャルスキルトレーニング」、特性による困りごとが発生している状況において、そもそも本人の周囲を調整して困りごとが発生しないようにする「環境調整」というものが挙げられます。 薬物療法 心理社会的治療に対して、直接身体に作用する薬物を用いて困りごとに対処していくのが「薬物療法」です。ただし、現在はADHDの治療薬はあるものの、ASDやSLDへの治療薬はありません。また、症状を根治するものではなく、一時的に症状を抑えるものとなります。 とはいえ、服用した経験のある人からは、「頭の中がスッキリ静まり返ってびっくりした」「集中力が劇的に上がった」といった感想があがることがあり、一定の効果が得られるところは見逃せません。ADHDの治療薬として承認を受けている薬は以下の4つです。 名称内容コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩徐放錠)・即効性あり・約12時間程度で効果が消失・ADHDの子どもの7割に効果・2013年に18歳以上の成人投与承認ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)・効果が現れるまで約8週間ほど・1日2回服用で24時間効果が継続・2012年に18歳以上の成人投与承認インチュニブ(グアンファシン塩酸塩徐放性製剤)・2017年3月に承認・特に多動性・衝動性について新たな治療の選択肢となることが期待されるビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル塩酸)・2019年3月に「小児期におけるADHD」の適応において承認・ADHDの診断治療に精通した医師に限り、薬物依存にも対応できる医療機関薬局においてのみ取り扱い可・他のADHD治療薬が効果不十分のときのみに使用 なお、ASDやSLDの特性を持つ人に対しては何も薬物療法をおこなわないかというとそうではありません。例えば二次障害として不安や不眠などの症状が出ている場合には精神安定剤などの治療薬を用いたりしています。 二次障害については、下記記事を合わせてお読みください。
【発達障害当事者が解説】発達障害者のためのマルチタスク対処法

マルチタスクに苦手意識のあった発達障害当事者が、特性をカバーするために編み出した「タスク管理」テクニックを紹介します。

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「仕事が溜まってしまって、どれからやればいいか分からない」「複数の仕事を同時進行するのが難しい」 発達障害、特にASDやADHDのある人は、複数の仕事が目の前にある状態、いわゆる「マルチタスク」に苦手意識を持ちがちではないでしょうか。一方で、現代では、たくさんの仕事を効率よくこなすことが要求されがちです。 発達障害のADHDのある筆者は、自らの特性をカバーする目的で編み出した「タスク管理」をメインに、マルチタスクへの苦手感を大幅に払拭できました。その経験から「発達障害者はいかにマルチタスクに対処すべきか」についてお伝えしたいと思います。この記事が、特性による困りごとのある皆さまにとって「働きやすくなるためのヒント」になることを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 なぜ発達障害者はマルチタスクが苦手なのか まずは、発達障害者、特にASD/ADHDのある人がマルチタスクへ苦手感を持つ理由をご説明したいと思います。 ASDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ASDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の2つの傾向が大きく関わっています。 シングルフォーカス特性一度に注意を向けられる範囲が狭くなる。興味関心の幅が狭くなりがち。シングルレイヤー思考一度に一つの情報しか処理しにくい。複雑な状況の理解が難しく、明記されていないルールを自然と読み取ったり、物事の「裏」を察したり、といったことが苦手になる。優先順位がつけにくくなる。 マルチタスクな職場では、この2つの傾向があるとなかなか難しいです。 ADHDのある人がマルチタスクが苦手な理由 ADHDのある人がマルチタスクに対して苦手感を持つのは、次の傾向が大きく関わっています。 ワーキングメモリーの弱み脳の一時的な記憶の置き場であり、作業場でもあるワーキングメモリーの機能低下により、臨機応変な対応が難しくなったり、不注意が起こりやすくなったりする。聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい。複数の作業を同時に進めることが難しい。集中し続けることや、注意し続けることが苦手。複数のことに目を配れない。など。 特に「聞いたことや考えたことを一時的に頭にとどめたままで整理することが難しい」「複数の作業を同時に進めることが難しい」「複数のことに目を配れない」といった傾向は、常に複数の仕事を抱える状況だと、困りごとを生みやすくなります。 ※上に挙げた話の詳細は、大人の発達障害とはでご説明しています。ぜひ参考になさってください。 そんなASD/ADHDのある人は、「マルチタスクな職場」にどう対応していけば良いのでしょうか。
【発達障害当事者の経験談】「転院」するときに考えておくべきこと

発達障害のある方が心身健康に働くためには「自分に合う医師の選択」が重要です。実体験をもとに医師選びのポイントを紹介します。

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「発達障害で通院しているが、医師と相性が合わない」「転院したいが、どのように考えればいいのか分からない」 発達障害のある方にとって、医師の存在はとても大きいと言えます。そもそも、発達障害の診断書を出せるのは医師だけです。しかも、診断書の記載内容は病名のみならず、病歴や治療の経過、生活能力の状態などにまで及びます。自然と医師の関わりは大きくなるのです。 また、診断書を出してもらって終わりというわけにはいかず、その後も心身の変化によって服薬を調整したり、日々の生活についてアドバイスを受けたりします。したがって、医師の選択は今後の生活を大きく左右すると言っても過言ではありません。 一方で、「医師をどう選んだら良いか」の大きな指標が示されているわけではありません。医師の「食べログ」のようなものはないのです。口コミがネット上にある場合もありますが、それがどの程度信頼できるかは分かりません。 発達障害当事者であり転院の経験がある筆者として、その経緯をお伝えしつつ、医師を選ぶ基準となる考え方などをご説明します。皆さんが少しでも社会生活を安心して送れるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 筆者の体験談 筆者は、最初の病院を含めて合計3院、2回の転院をしています。それぞれ経緯と所感を書いてみます。 1カ所目:都内某診療所 【経緯】 仕事がうまくいかなかった筆者は、ネットで調べてみて「自分は発達障害ではないか」と考えるようになり、「東京都多摩総合精神保健福祉センター」に相談しました。面談の後、より詳しく調べてみようということになり「東京都発達障害者支援センター(TOSCA)」を紹介され再度面談をしたところ、都内の某診療所を紹介されました。 【所感】 筆者は、自分の「忘れっぽさ」「段取りの悪さ」といった特徴を自覚しており、心の底では「自分は発達障害であろう」と考えていました。結果、その通りの診断をしてもらうことができ、その意味では自分の意図に沿う対応をしてくれたと言えます。 また、当時は障害者が社会生活を送るのに必要なサポートを提供してくれる、いわゆる「社会資源」についての知識が筆者にはなかったのですが、診療所に常駐していたソーシャルワーカーさんに「障害者雇用」という働き方を教えてもらうことができ、その後の就職への足がかりを得ることができました。この点においても、筆者にとって良い選択だったと言えます。 ただ、当時東京都の多摩地方に住んでいた筆者は、23区内にあるこの診療所は自宅から往復3時間近くかかり、通院に苦痛を感じていました。 また、医師とのやりとりに違和感を覚えたことがありました。ある診察時に「私は本当に発達障害なんでしょうか?」と質問したときに、少し強い調子で「だって、それでうまくいっていないんでしょう?!」と少々強く言われたのです。今考えれば、「仕事がうまくいかず社会生活に支障をきたす」という時点で自明なのですが、強く言われるほど変な質問をしていないのではないかと思いました。 【転院のきっかけ】 1社目の会社に就職後、自宅から遠かったこともあり、また「通い続けなくても自分は大丈夫」と思って次第にこの診療所から足が遠のいていきました。 2カ所目:都内某医院 【経緯】 1社目、障害者雇用で就職して一安心していましたが、人員整理や親会社との合併の影響でだんだんと業務負荷が高くなっていき、やがて仕事がうまくいかなくなり休職に至ります。休職するためには医師の診断書が必要なので、自宅の近場で手っ取り早く休職できる診断書を書いてくれる病院を探しました。その結果、自宅から自転車で10分程度のところにあるこの医院を見つけ、通院し始めました。 【所感】 経緯でも書いたとおり、「休職できる診断書をもらう」のが目的でした。「このまま働き続けることは難しい」という状況に陥ったときは、一刻も早く休養を取る必要があります。休職へとスムーズに移行するためには、医師の協力が不可欠となります。そういうときは、休職のための診断書を作成してくれる「装置」として「医師を使う」のも大いにありだと考えています。 この医院の医師は、ある意味機械的に、すぐに休職に必要な診断書を書いてくれました。このときの筆者にとってはとてもニーズにマッチした医院だったと考えています。 【転院のきっかけ】 通所していくうちに、最初はメリットとして感じた「機械的さ」に物足りなさを感じたことと、休職期間が終了してそのまま退職し、2社目に転職するバタバタから通院しなくなりました。そして、2社目でも仕事がうまくいかず休職を考えたときに、別の病院を探すようになります。 3カ所目:都内某クリニック(現在) 【経緯】 2社目でまた仕事がうまくいかず休職を考えたときに、ちょうど知り合いが行っているクリニックが良いと話を聞きました。そこで行ってみたところとても相性が良く、現在でも継続して通っています。 【所感】 2カ所目の医院で感じた物足りなさは、当初それが何なのかがはっきりとは分かっていませんでした。しかし、この3ヶ所目のクリニックの医師と会った瞬間に分かりました。ただ単に薬を出してもらうだけではなく(それも大事ですが)、自分の話をしっかり聞いてくれて、より生活や仕事を考慮して踏み込んだアドバイスをしてくれることを筆者は欲していたのです。また、とにかく声が明るく、ハキハキとしていつでも笑顔で話してくれることも、筆者としても安心感がありました。 このクリニックに通い続けて数年経ちますが、結果的に服薬内容は変わっておらず、月1回の通院の際には、今の生活や仕事の話をして、「頑張ってね」と言われて診察は終わり、ということもあります。「それは本当に良い医者なのか?」というような話ですが、それでも危ない傾向があるときはちゃんと言ってくれる、筆者にとっては良いバロメーターとして頼れる存在になっています。
【発達障害当事者が解説】「仕事がうまくいかない」対策と継続のコツ

「仕事がうまくいかない…」を乗り越えるための対策を筆者の実体験をまじえご紹介。対策を立てた後に『継続』するためのコツもお伝えします。

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「仕事がうまくいかない」「同じようなミスを繰り返してしまう」 発達障害の特性がある方にとって、「仕事がうまくいくかどうか」はかなり大きなテーマでしょう。注意欠如・多動性障害(ADHD)の当事者である筆者も、過去に仕事でミスや失敗をして落ち込み、不安感にさいなまれる経験をしてきました。 平成29年に発表された厚生労働省の発表によると、精神障害者の障害者雇用の離職理由について「仕事内容があわない」「作業、能率面で適応できなかった」という項目が上位にきています。また、日本国内の企業の99.7%を占める中小企業のうち、障害者雇用の定着の理由として「作業を遂行する能力」を挙げる企業が一番多いという調査結果も出ています。 参考文献:障害者雇用の現状等|厚生労働省 発達障害特性への対策は世にたくさん発信されています。一方で、発達障害のある方の離職率が劇的に低くなったという話は聞きません。つまり、対策を知ったとしても、それを実際の自分の業務に生かすことが難しいのではないでしょうか。 今回の記事では、発達障害のある方によくある失敗とその対策、そして、対策を継続し習慣化していった筆者の体験談をお伝えします。皆さんが少しでも職場で長く違和感なく働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害当事者によくある失敗 発達障害の特性があると、以下のような失敗をしがちです。それぞれについて、原因と対策を挙げてみます。今回ご紹介をする【原因】は、あくまでも一例です。特性は一人ひとり異なるため、あくまでも参考としてご覧ください。 ① ケアレスミスが多い 【原因】 一般に、「記憶の抜け漏れ・忘れ」はケアレスミスにつながりやすいと考えられます。発達障害の特性の有無と、「ワーキングメモリ」と呼ばれる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力の間には関連性があることが指摘されています。 参考文献:「ワーキングメモリと実行機能の発達」|発達心理学研究 2019,第30巻,第4号,173-175 【対策】 ワーキングメモリの働きを自分でコントロールすることはなかなかできません。頭の中だけで覚えておこうとするのではなく、紙のノートやPCのメモ帳に書き出して保存することが、簡単ながら一番効果的な対策です。電話を受けたらメモをする、口頭で指示を受けたらToDoリストに書き出すなど、確実に残る記録としていつでも参照できるようにしておくことが大切です。 ② 納期を守れない 【原因】 発達障害の特性の1つとして、不安が強く心配性であるため、失敗・挫折への恐怖が強いという傾向があり、仕事(やるべきこと)の先延ばしをして納期を破ってしまいがちだとされています。 参考文献:ひきこもり支援者読本 第2章「ひきこもりと発達障害」|内閣府 【対策】 「できないかもしれない」と思ってしまう仕事は「失敗せずやれる」と思えるような細かい作業手順に分解することでその不安や恐怖を取り除きます。すると、とりあえず手を付けることができるようになります。その結果、先延ばしを避けて納期通りにやるべきことを終わらせることができます。 ③ 優先順位を間違える 【原因】 やるべきことが複数あり、そのどれから着手するかを決める、いわゆる「優先順位づけ」についてもまた、発達障害当事者は困難を抱えがちです。それは、目の前の作業に没頭するあまり、全体と部分の把握を適切に切り替えることが難しかったり、先々の展開を想像することが苦手だったりすることが原因といっても良いでしょう。 参考文献:注意欠陥/多動性障害児を対象とした課題解決場面におけるメタ認知を促すための支援方法に関する事例的研究|上越教育大学大学院 【対策】 「手を付けなければいけない順番」の指標として締切を意識します。締切を意識することで、早く終わらせなければいけないのはどれかが分かり、正しく優先順位づけをすることができます。 このように、それぞれ原因を知り対策を講じることで、よくある失敗を事前に避け、仕事の質を上げることができます。しかし、対策を講じたは良いが続かなかった、飽きて途中で辞めてしまったといった経験がある方も多いのではないでしょうか。 そこで、筆者の「挫折してしまった(継続できなかった)経験」と「うまく継続できた経験」を対比して、対策を習慣化するコツをお伝えします。
【発達障害当事者が解説】無理なく働き続けるための特性理解と対策

長く健康的に働き続けるためにはどうすればいいのか。筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。

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「仕事がうまくいかず長続きしない」「職場の環境と合わなくて、短期離職を繰り返してしまう」 令和2年に発表された厚生労働省の資料によると、精神障害のある方が1年間就労を継続できている割合は50%を切っており、定着が困難な方が多いと解説されています。 参考文献:障害者雇用の促進について関係資料|厚生労働省 発達障害の注意欠如・多動性障害(以下ADHDと表記)の当事者である筆者の就労経験からしても、最後に勤めた会社を除き、思ったほど長続きしなかった印象があります。障害者雇用枠で就労していた会社は4年強で休職し、一般雇用枠で就労していた会社は2年と持たずに休職してしまいました。実際は休職に至るまでかなり長い期間をかけて「就労環境とのミスマッチ」が生じていたので、適切な環境で就労できていた年数は、それよりもずっと短いという印象です。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、なぜ発達障害のある方は仕事が長続きしない傾向にあるのか、その原因や対策などについてお伝えします。皆さんが健康で長く働けるよう、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 発達障害のある方が仕事が長続きしない原因とは 仕事が長続きしない原因は「①仕事内容とのミスマッチ」「②職場環境とのミスマッチ」の2つと考えられます。 仕事内容とのミスマッチ 曖昧な内容が理解できないことで空気が読めなかったり、衝動的に思いついたことをしゃべったりといった発達障害の傾向は、周囲の人たちとのコミュニケーションがうまくいかなくなることにつながりがちで、仕事内容とのミスマッチが発生する可能性があります。 例えば、接客業はお客様とのコミュニケーションありきの仕事なので、お客様とのやりとりがうまくいかなければ、そもそもその仕事にマッチしないということになります。 職場環境とのミスマッチ さらに、せっかく仕事内容とはマッチしていても、例えば遠隔地にあるオフィスに通うための長時間の満員電車の混雑に耐えられなかったり、騒がしいオフィス内で発達障害の特性による聴覚過敏から集中できなかったりといった、職場環境とのミスマッチを生んでしまうこともあります。 筆者の事例 筆者も発達障害の特性によるミスマッチに悩まされた一人です。 「先延ばしグセ」がもとで期日に厳しい公共機関へ提出する報告書に手を付けずクレームを受ける「段取り下手」で社内イベントの準備がうまくできない「マルチタスクが苦手」なあまり名刺発注業務と社内備品の発注と来客対応の優先順位がうまくつけられない「抜け漏れ」でついさっき頼まれた仕事を忘れる「自己関連付け」(何か良くないことが起こったとき自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう)で通常どおりに使用していたプリンターが壊れた際に自分が原因があると考えてしまう このようなことが多発し仕事がうまくいかなくなる→ストレスが溜まりその傾向に拍車がかかる→より仕事がうまくいかなくなる、という悪循環に陥りました。 また、仕事がうまくいかないことで、周囲の方々との関係も悪化し、あるいはそう自分が勝手に思い込んでしまい、居場所感のようなものがだんだんなくなっていき、「これ以上仕事を続けられない」という心理状態になっていきました。 この悪循環を断ち切るには、自らの特性に応じた対策を打つことが必要です。そのためには、自分にはどういった特性があるのかをまず知ることが大事です。
【発達障害当事者が実践】職場の対人関係を円滑にするビジネスマナー3選

ASDのある方が困りごとを感じやすい「職場でのコミュニケーション」。筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコツをお伝えします。

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「普通に振る舞っているつもりなのに、周囲の人たちとの壁を感じることがある」「日頃の行動について注意されたが、どうしたら良いか分からない」 多かれ少なかれ、どんな人でも職場に溶け込むための悩みはあるものでしょう。ただ、周囲の様子や反応から、職場における適切な振る舞いを学ぶのは、発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(以下、ASDと表記)の特性がある方にとって苦手なことではないでしょうか。 筆者は、診断として受けているのは注意欠如・多動性障害(以下、ADHDと表記)のみですが、発達障害はスペクトラム(連続性)のあるものであり、ASDに由来する(と思われる)困りごとも体験してきました。 今回の記事では、そんな筆者の体験談を交えながら、職場を安心できる居場所とするためのコミュニケーションのコツを3つお伝えします。 今回は「職場のコミュニケーション」のなかでも社会人として問われる機会の多い「ビジネスマナー」に絞ってお届けします。 皆さんが少しでも働きやすくなるように、この記事がお役に立つことを願っています。 [toc] 執筆者紹介 小鳥遊(たかなし)さん 発達障害やタスク管理をテーマに、2021年まで会社員、2022年からフリーランスとして活動している。 発達障害(ADHD)当事者。主に発達障害や仕事術をテーマとするweb記事を執筆。2020年に共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)を執筆し発行部数は10万部を超える。 また、就労移行支援事業所でタスク管理等に関する定期プログラムやセミナー等を実施。企業や大学等での講演、個人/法人のタスク管理コンサルティングもおこなっている。 ASDのある方が、ビジネスマナーが苦手な原因とは ASDの特性がある方は、場の空気を読むなどして暗黙のルールを認識することが苦手とされています。 参考文献:発達障害者の就労上の困難性と具体的対策 ─ASD 者を中心に|独立行政法人労働政策研究・研修機構 なぜ、ASDの特性がある方は、暗黙のルールを認識するのが苦手なのでしょうか。 一般に、発達障害の特性がない定型発達の方は、「①理解できていない」状態から「②なんとなく分かる」という段階を経て「③理由が説明できて分かる」という順番で理解が進みます。 しかし、ASDの特性がある方は、「②なんとなく分かる」というプロセスがないことが研究で分かっています。つまり、「①理解できていない」の次が「③理由が説明できて分かる」なのです。 これは、言葉で分かるようにならないと理解ができないということと、一度理解したことを「なんとなく」変更する柔軟な対応が難しい(マイルールへのこだわりがある)ことを意味します。 参考文献:他者理解の発達再考―直感的他者理解をめぐるASD(自閉症スペクトラム)研究を通して―|東洋大学 どの職場でも「これは言わなくても守って当たり前」と思う「暗黙のルール」は存在します。そして、色々な職場に共通する暗黙のルールが「ビジネスマナー」としてまとめられ、明文化されないまま社会全体に広まっていったと考えて良いでしょう。これは、言葉以外の意味合いを重要視する日本ならではの文化かもしれません。 ただし、ASDの特性がある方がこのような文化の中でうまくコミュニケーションをとっていくのは、上記の内容から分かる通り、難しいと言わざるを得ません。 そんな発達障害の、特にASDの特性がある方が、職場でのコミュニケーションを円滑にするためにはどうすればいいのでしょうか。具体的な対策としてのビジネスマナーを、筆者の失敗事例を通してお伝えしていきます。