大人の発達障害~安定した就労につながる心の育て方~
はじめに
うつ傾向やうつ様症状、適応障害、発達障害と併発している躁鬱や抑うつ病、愛着に関する各種苦痛や連続したストレスや愛着障害・・・大人の発達障害も他の疾患と同様、他疾患との併発や二次障害発症のリスクがあります。また個人で抱えているつらさや困りごとも千差万別。その原因/誘因も人によって異なっています。
ADHD、ASD、知的障害など、大人になってから精神障害症状(適応障害、うつ病、睡眠障害、摂食障害、統合失調症など)に辛さを抱え、病院を受診し、はじめて「発達障害」という診断を受けられる方もおられます。ときに反芻やフラッシュバック、PTSDなどの強いストレス障害を抱えながら、生活している方も中にはおられるのではないでしょうか。なかなか他言できず、何か始めようとしても、不安やネガティブな考えが次から次に浮かび、どうしようもなくなる・・・これからどうなるのか、どうしていったらいいのか・・・。
残念ながらわたしたちは過去のできごとそのものを、変えることはできません。(精神科の治療を受けながら、過去の「意味の書き換え」はできる場合がありますが。)変えられない過去のできごとに「今」を奪われ続けることを、誰も望んではいないと思います。
ではどのようにして、「今」を取り戻していったらよいのでしょうか。
ヒトは不思議な生き物で、自分の思いや考えで自らの行動を決定していきます。他の生物体の行動決定権は多くの場合「本能」です。わたしたちヒトはこの本能にプラスして「思考」を活用しながら、「自分が望む方に」自分の未来の行動を変えることが、可能な生き物だと言えます。自分のこころを自分で癒し、優しく温かく、ゆっくりと育て直すことができます、自分で成熟させていくのです。その方法を丁寧に時系列でご紹介していきます。
自分の「これから」について、少し前向きになれるように、あなたが本当に望む方向にこころとからだを向けて、1秒先の未来を優しく温かくあなた自身が育てていけますように、いやしと育てに注目し「今のわたしをみる」「1秒先のみらいを育てる」「平常心とわたしとの新しい出会い」の順で、みていきましょう。
「いやしと育て」について
精神障害の治療(急性期)で大切にされていることのひとつに、安全安心の確保とともに「充分な休憩」が挙げられます。症状が特異に出ている急性期だけではなく、寛解期に移行してからも、ずっとゆるく続けていく治療の根底に「充分な休憩」が横たわっています。
安心して休憩できなければ「充分な休息」は得難いものです。わたしにとっての安らぎは何か、落ち着いて休める場所はどこなのか・・・。残念ながら、これは誰かが時間や場所を準備してくれるものではありませんよね。充分な休息のための時間は自分で捻出し、環境は自分で探すかつくるか、確保する。
”そんな時間ない”
”そんな場所なんてない”
こんな思いにとどまり続けることはストレスや疲れがたまりネガティブや不安の沼に、みずからハマってしまうことになります。急性期であれば、かかりつけ医、専門医に相談しながら、自分の安心を取り戻してください。セルフコントロールの領域であれば、休息を取りながら・・・”時間は自分でつくるもの”、”場所は自分で探すもの”、あるいは”自分で築いていくもの”、と考え方を少しづつシフトしていくことも、自分自身を守るためにとても大切なことなのです。
「わたしのいやし」を自分以外のヒトに過度に求めず、ご自身のなかでゆっくり落ち着いて、できるようになることで、ストレスを長引かせたり疲れが蓄積されることも少なくなるでしょう。「わたしのいやし」について、安定した就労につながる心の育て方についてみていきましょう。
1 今のわたしをみる
充分な休息をとりながら、「今」の自分をみていきましょう。優しい視線で穏やかなこころでおこないます。難しいかもしれませんが、決して”自分いじめ”に陥らないように気を付けてましょう。
「今」「ここ」を”ありのまま”みること、そしてそれを受け入れることは、ストレスや疲れを感じているときには、”つらい”と感じ、進まないこともあります。上手くいかなかったこと、失敗したこと、人から言われた言葉や受けた態度ばかりが思い出される、反芻やカメラアイ、タイムスリップなどの特性をお持ちの方もおられるかと思います。(反芻への対処法については以下のディーキャリア大分オフィスのブログをご参照ください)大人の発達障害~対人関係に及ぼす、反芻の影響と対処法について~|就労移行支援事業所ディーキャリア (dd-career.com)
「今」「ここ」をみていく作業なので、記憶を何度も繰り返す必要はありません。ただ「今」をみつめます。「今」何が聞こえてきますか? 何を感じますか? 「今」何を望んでいますか?
充分な休息をとりながら、こうして「今」のご自身に優しいまなざしを注いでいきます。ヒトは自分で自分をいやす力を生まれながらに携えています。諦めず焦らず、少しづつ取り組んでいきましょう。
2 1秒先のみらいを育てる
「今」のありのままの自分をみつめて、いろんな思いや感情が動いてくると思います。それもそのまま否定しないでうけとめましょう。そのままの状態で構いませんので、1秒先のみらいに思いを移していきます。
「これから」のわたしは、どのようなわたしになりたいと思いますか? ・・・たとえば、ヒトとどのような関係性を築いていきたいと考えますか? 職場ではどのように働いていきたいと思いますか? プライべートではどんなことをしたいと思いますか? 1年後や2年後を思い描くことは難しいと思いますが、このように「みらいの自分」を1秒後、30分後、1時間後、明日、1週間後、1か月後・・・と少しづつイメージしていきます。「どうなりたいか」のイメージです。ご自身の思いや声をじっくり聴いてみましょう。
進められるところまででOKです。焦ったり、ありのままではない自分像を作り上げないためです。できる限り「ナチュラルなあなたのみらい」をイメージして欲しいからです。続きはまた充分な休息がとれたときにおこないます。
3 平常心との新しい出会い
心の中心に「安心とポジティブ」があるか、「不安心とネガティブ」があるかによって事象の意味付けが180度変わります。事象に対するこの認識の違いが、自分の行動を決定する元になっています。安心とポジティブが中心に在るためには、「平常心」が一役買っています。「平常心」はザワザワする心や、強度な緊張下が続いたり、また負のストレスにとどまりがちなときには、残念ながら保つことや、成長させることが難しくなります。感情のコントロールを担い、安心とポジティブを支えている「平常心」を、どのようにして維持し、育てていったらよいのでしょうか。また平常心とは一体どのようなものなのでしょうか。
平常心とは、「精神が安定していること、理性を伴う心」です。具体的な行動レベルで一部説明すると、「相手の領域に踏み込まない、自分の領域にも踏み込ませない態度」です。理性を伴うことで自分の領域は保たれます。結果、次のような利点が生じます。
・物事に不用意に動じることがなくなる・冷静な判断を下せる・感情のコントロールがしやすくなるなど
踏み込ませないコミュニケーションの取り方のひとつにアサ―ティブコミュニケーションがあります。(アサ―ティブコミュニケーションについては、ディーキャリア大分オフィスでは見学会や体験会で訓練することができます。ご興味のある方は是非お問い合わせくださいね。)
次にこの平常心を自分で育てていく方法について図に示します。
①充分な休息と日常生活活動の継続 (充分な休息については先に述べた通り。)
日頃、自分がおこなっていること、例えば朝起きる、着替える、ご飯を食べる、歯を磨く、ゴミ捨てをする等など、日常のこまごました雑務を、どのような状況下に合っても”でき得る限り”、粛々とおこなっていくという、非常に地味な方法です。
わたしたちヒトはこのような非常に当たり前に思えるようなこと(雑務)によって支えられている、このような日常に支えられて生きていると言えます。当たり前のことをできるだけ淡々とつなげていく行動が、「今」のわたしをみるにつながっていきます。
朝起きる、着替える、ご飯を食べるなどの日常の活動を行うこと、つなげていくことが難しくなった場合、できるだけ早い段階で専門医(かかりつけ医)に相談し、必要なサポートを受けることを勧めたいと思います。日常の活動(日々、おこなっていること)評価は、自分のメンタル面含めた体調の重要なバロメーターのひとつです。
②肯定ラインを下げる
肯定ラインとは自分自身の中にある「合格ライン」のようなものです。例えばテストの合格点が60点だったとします。しかし「自分の合格ラインを90点に設定」したと仮定した場合、ヒトは「自分の合格ラインと自分の現実のラインの差分」に注目します。
ですから仕事においても、「自分の目指す、納得できる、自分がよしとする=肯定ライン」が、高ければ高いほど、現実のラインとの差分が広がる可能性が高いことになります。(もちろん仕事ですから「求められる状態」に近づける必要はありますが。求められているライン以上を無理に設定することは差分を開きやすくし、自分を追い詰めたり、本来感じなくてもよい挫折感を持ってしまう可能性を高めるなどストレス因として定着してしまいます。)
肯定ラインを下げることで意識野(認知し物事を考えるときに参考とする題材)が広がります。この意識野が広がることで、自分にも、他者にも思いやりを持つことができる余裕が生まれたり、挫折感が消失することができ、平常心を保つ土台ができてきます。
おわりに
「ヒトは不思議な生き物で、自分の思いや考えで自らの行動を決定していきます。」と冒頭でもお伝えしました。自分でコントロールできる領域を少しづつ増やしていくこと、まずは実際に小さな行動を実践してみる。この一歩が「わたしが望む、みらいのわたし」につながっていくことを、訓練を通して体感し積み重ねていきます。今のわたしをみる、1秒先のみらいを育てる、そのために日常の活動を継続し、ありのままの自分を把握しながら、肯定ラインを設定し小さな行動を連続させていきます。その結果がのぞむみらいの自分の姿、就職や安定した就労につながるものになっていくのです。
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①発達障害の特性に応じた訓練プログラムを提供している、大分県で唯一の就労移行支援事業所です。
②発達障害(注意欠如・多動性障害ADHD 自閉症スペクトラム障害ASD:アスペルガー症候群、適応障害など)のある方が、ご利用されています。
③大人の発達障害に専門知識のあるスタッフ(有資格者:ジョブコーチ、国家資格キャリアコンサルタント、社会福祉士、看護師、児童発達支援士、SSTスペシャリストなど)で運営しております。
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