発達障害(ASD)と会食の困難──食物選択性・食事恐怖をどう理解するか
はじめに
発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)は、単なるコミュニケーションや行動の特性だけではなく、日常生活のさまざまな側面で困難が生じることが知られている。中でも「食事場面での困難」は、本人や家族にとって生活の質に直結する深刻な課題であり、しばしば「会食恐怖症」や「食物選択性(selective eating)」として表出することがある。
本稿では、ASDに特徴的な食物選択性の研究(1970〜2013年の文献を網羅したシステマティックレビュー)を紹介しつつ、発達障害と会食にまつわる困難の背景や支援の考え方について解説する。
食物選択性とは何か?
「食物選択性」とは、食べられる食品が極端に限られたり、特定の質感や色、味だけを受け入れる傾向が強い状態を指す。これは単なる偏食とは異なり、感覚過敏・行動特性と強く結びついた食行動のパターンとして研究されている。一般的な子どもよりもはるかに食品の種類が限定される場合や、特定の食品だけを繰り返すケースが報告されている。
ASDと食物選択性の関係
科学的エビデンス
システマティックレビューによれば、ASDを持つ子どもでは「食物選択性」が一般集団と比べて有意に高いというコンセンサスが得られている。研究論文の結果を分析すると、ASDの特徴である感覚過敏や限定された行動パターンがその背景にある可能性が強く示唆されている。具体的には、
- 特定の質感(柔らかさ・堅さ)に対する強い反応
- 色・匂い・味に対する過敏な反応
- ルーチン(決まった食品・食べ方)への執着
といった特徴が、食物選択性の強さと関連している。
このため、ASDのある子どもは安全に感じられる食品以外を拒否したり、新しい食品を恐怖感と結びつけることがあり、結果として会食や外食の際に極度の不安や恐怖を示すことがある。これは単なる偏食や好き嫌いの範囲を超え、行動・感情反応として深刻な生活障害になる場合がある。
会食恐怖症と食物選択性の違い
「会食恐怖症」は医学的には社交不安や特定の不安障害の文脈で議論されることが多く、他者と一緒に食事をすること自体に恐怖や不安を感じる状態を指す。一方で、ASDにおける食物選択性は、食品そのものの感覚的特徴への反応や行動パターンによるものであり、必ずしも他者が関与する社交不安だけに起因するわけではない。
しかし、両者は重なりやすい側面がある。例えば、
- 食事場所・時間の予測不可能性への不安
- 他者と同じものを食べなければならない状況
- 初めての食品への抵抗
といった状況では、ASDの特性と社交不安が重なり、会食全般への恐怖感が強まることがある。
食物選択性がもたらす影響
●栄養と健康への影響
食事が限定的になると、栄養バランスが崩れる可能性が高まる。特定の食品しか受け入れないことで、
- ビタミン・ミネラル不足
- 体重増加や減少の不均衡
- 偏った食習慣の固定化
などが生じうる。こうした栄養的影響は、身体発達だけでなく、気分や行動面にも影響を与える可能性がある。
●社会参加の阻害
家族や友人との会食、職場でのランチなど、社会的活動としての食事は日常生活の重要な要素である。食物選択性や会食恐怖によって、このような活動への参加が制限されることで、孤立感やストレス、社会的自信の低下を招くこともある。
支援・介入の考え方
●感覚への配慮
食物選択性への理解には、感覚処理の違いが重要な手がかりとなる。例えば、テクスチャーへの敏感さを把握したうえで、徐々に異なる食品を紹介するなど、本人にとって安全・安心な方法で介入を設計することが効果的である。
●行動的アプローチ
行動療法や家族支援など、専門家の支援を受けながら段階的に食行動に取り組む方法も活用されている。家族の理解と協力、専門職との連携が重要であり、単なる「好き嫌い」の改善ではなく、発達特性や不安への対応として支援を計画することが求められる。
まとめ
発達障害と食事の困難は切り離せないテーマであり、特に食物選択性はASDにおける重要な日常生活上の課題の一つである。単に「好き嫌い」と片付けず、感覚や行動特性の影響、社会参加への影響まで含めて理解することが大切だ。社会的な場での会食恐怖や不安は、発達特性と結びついて強く表れることがあるため、丁寧な支援と環境調整が必要である。
発達障害者への支援は、個人の体験と背景を尊重しながら進めることが、本人の生活の質向上につながる。

参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24097852/
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