ADHDと遅刻――「怠けているわけじゃない」と知ってほしいこと

ADHD（注意欠如・多動症）のある人は、遅刻に悩みやすいと言われています。「時間にルーズ」「自己管理ができない」といった印象を持たれがちですが、実際には、脳の特性によるつまずきが背景にあります。

たとえば、ADHDのある人は「今、この瞬間」に集中しやすく、未来の予定を意識し続けることが難しい傾向があります。これを「タイムブラインドネス（時間の盲目）」と呼びます。予定が頭から抜けてしまったり、「あと5分ある」と思っていたら15分経っていた、ということも珍しくありません。

また、「出かける前に何をすべきか」「それにどれくらい時間がかかるか」の見積もりも苦手なことがあります。気になることに気を取られて支度が進まなかったり、ギリギリになって忘れ物に気づき戻ったり…と、意図せず遅刻につながってしまうのです。

このような困りごとに対して、本人が工夫していることも多くあります。タイマーや通知アプリを活用して時間を「見える化」したり、朝の支度をチェックリストにして迷いを減らしたり。出発時刻に“余裕”を持たせるなど、遅刻を防ぐ仕組みを日々試行錯誤しています。

それでもうまくいかない日もあり、「また遅刻してしまった…」と落ち込むことも少なくありません。本人も責任感を持っているからこそ、遅刻に罪悪感を抱き、自信を失いやすいのです。

周囲の人が「怠けているのではなく、特性によって難しさがある」と知っているだけでも、本人にとっては大きな安心になります。「事前に声をかける」「時間の共有をわかりやすくする」など、少しの配慮で支援にもつながります。

ADHDの人が遅刻しやすいのは、「だらしない」からではありません。自分に合った方法を見つける努力をしていること、そしてそれを理解しようとするまなざしが、よりよい関係づくりの一歩になります。

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