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発達障害のある方が障害年金を受け取るための条件や申請方法

「発達障害があり、障害年金を受け取りたい」と考えている方に向けて、障害年金の概要や対象となる条件、もらえる金額、申請方法など、知っておきたい基本情報をご紹介します。「発達障害で申請する際のポイント」もまとめました。

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このコラムでは「発達障害があり、障害年金を受け取りたい」と考えている方に向けて、障害年金の概要や対象となる条件、もらえる金額、申請方法など、知っておきたい基本情報をご紹介します。「発達障害で申請する際のポイント」もまとめました。 障害年金について、「発達障害だと、障害の程度が軽いとされて受給できない」「仕事をしている人は、受給の対象とならない」という誤解をお持ちの方は少なくありません。しかし、発達障害の特性により日常生活や働くことに支障がある場合には、障害年金を受給できる可能性があります。また、就業中の方であっても、障害により仕事に困難さが出ている場合には、対象となることがあります。 また、障害年金の対象とならない方であっても、障害手当金を受給できる可能性があります。 障害年金について正しい知識を持ち、本記事を参考にご自身が対象となり得るどうかをご確認ください。 [toc] 1. 障害年金の種類 障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2つの種類があります。また、対象基準より障害の程度が軽いと判定され、障害年金の対象とならない場合でも、「障害手当金」を申請できることがあります。どの年金を受給できるかは、厚生労働省が障害の程度によって定めている障害等級を元に判断されます。それぞれについて、以下に詳しくご説明します。 (1)障害基礎年金 障害基礎年金とは、障害等級の1級・2級に該当する障害がある場合に受け取れる年金です。 前提条件が「国民年金に加入していること」であるため、20歳以上60歳未満の日本に住んでいる人であれば全員が対象です。20歳未満(年金制度に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)も同様に対象となります。 また、子供の頃のけがや病気、先天性の病気や障害によって日常生活に支障がある場合でも、障害等級の1級・2級に該当すれば対象となります。 (2)障害厚生年金 「障害厚生年金」は、障害基礎年金に上乗せされる障害年金です。 厚生年金に加入している間に障害が生じた場合、障害等級の1級・2級に該当する場合は金額が加算されて支給され、3級に該当する場合は障害厚生年金のみ受け取ることができます。 厚生年金に加入していることが条件であり、国民年金のみに加入している人は対象となりません。 (3)障害手当金 「障害手当金」とは、障害年金の対象となる等級に該当しない、軽度の障害がある方に支給される一時金のことです。 障害等級の3級よりも軽度の障害がある方で、障害が生じた原因となる病気やけがが初診日から5年以内に完治したときに受け取ることができます。 つまり、障害年金の対象とならない障害がある方でも、障害手当金は受け取れる場合があります。 発達障害のある方も、障害年金を受け取れる可能性があります。 発達障害は先天性の脳機能の障害ですが、先ほど解説したように障害年金はケガや病気だけではなく、生まれ持っての病気などによる障害がある方にも支給されます。つまり、発達障害による生活や仕事上の困りごとが支給の要件を満たすと判定されれば、発達障害でも障害年金や障害手当金を受け取ることができます。 では、発達障害による困りごとが要件を満たすかどうか、どのような基準で判定されるのでしょうか。基準となる障害等級について、次に解説します。 2. 発達障害の障害等級 「障害等級」とは、厚生労働省が定めた障害の程度を認定するための基準です。等級は医師の診断書に記載されている症状や、日常生活の能力・労働の能力などにより総合的に判断されます。 なお、障害者手帳にも障害の程度に応じて等級がありますが、障害者手帳と障害年金とは別の制度であり、等級の判定方法も異なるため、混同しないよう注意しましょう。制度が異なりますので、障害者手帳の等級と、障害年金の等級とは必ずしも一致しません。また、障害者手帳を取得していない方でも、条件を満たせたせば障害年金を受給することができます。 発達障害のある方の、障害等級の認定基準例は下記です。 障害の程度:1級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの 障害の程度:2級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの 障害の程度:3級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの *** 障害の特性により日常生活や労働に大きな支障が出ている場合は、その度合いにより等級が定められます。例えば、「感覚過敏(匂いや音、光などに対する敏感さ)による制限がある」「臨機応変な対応が苦手で常時管理や指導が必要」「コミュニケーションが難しく他従業員とのやりとりができない」など、働くうえでの困難さが認められた場合などです。 等級の判定は、医師の診断書に基づいて行われるため、診断書に「障害の特性によって生活や就労に制限がされていること」についてしっかりと記載されていることが重要です。 二次障害として精神疾患(ただし、障害等級の認定対象となる精神疾患に限る)が併発している場合には、発達障害と精神疾患の両方の症状を総合的に判断して、障害等級が認定されます。 一度等級が認定されても、認定時よりも症状が悪化したり、逆に軽減したりした場合には、等級が変わる可能性もあります。悪化した場合には、現在よりも上位の障害等級の認定を請求する「額改定請求」という手続きをすることができます。軽減した場合、障害年金・障害給付金の対象外となることがあります。 次ページ:障害年金をもらうためには、どんな条件がある?